吸血鬼研究家「吸血鬼(ヴァンパイア)」(1930年)

怪奇

金持ちの道楽は時には、命取りになる場合もありますね~

[原題]Vampyr
[製作年]1930[公開]1932[製作国]フランス・ドイツ
[日本公開]1932
[監督・製作・脚本]カール・テオドア・ドライヤー
[原作]シェルダン・レ・ファニュ
[撮影]ルドルフ・マテ
[上映時間]82

主な登場人物

アラン・グレイ(ジュリアン・ウェスト):
吸血鬼の研究家。吸血鬼を探し求めある村にたどり着く。

その他の登場人物

ジゼル(レナ・マンデル):領主の娘、レオーネの妹
レオーネ(ジビレ・シュミッツ):領主の娘。貧血で寝込んでいる。
村の医師(ジャン・ヒエロニムコ)
マルグリット・ショパン(ヘンリエット・ジェラルド):吸血鬼と思われる老女

あらすじ

アランは悪魔信仰や吸血鬼の研究に没頭する青年だった。それに没頭するあまり彼は夢想家となり現実と空想の境が曖昧になっていた。ある日彼は虫取り網をしょって、あてもなくさまよい、とある川辺の淋しい旅館にたどり着いた。村の名前をクルタンピエールといった。大きな鎌を持った男が、川辺の船つき場の鐘をならす。部屋に通されたアランは窓からその男を見た。部屋のランプに火を着けると、壁の奥から何か声がする。扉を開けると階段があり、上の扉から男が出てくる。不思議に思いながらも扉にしっかり鍵をかけ、寝床についた。しかしアランはその夜、不安に苛まれなかなか寝付くことができなかった。すると鍵をかけたはずの扉から老人が入ってくる。どなたですかと尋ねると、老人はあの子を殺してはならないと言い、本の包みに「我が死後に開けよ」と書き残して出て行った。翌朝不穏な空気を感じたアランは、外を探索してみる。倉庫の中を覗いてみると、義足の男の影が一人で歩き、ハシゴを登っていくのを目撃する。影を追って行くと、影は座っている本体の義足の男のそばに戻った。ふと壁をみると一斉に影だけが踊り始めた。医学博士と書かれた部屋に入ったアラン。そこは薄汚くドクロや怪しい薬物、本が乱雑に置かれていた。階段を博士風の老人が降りてくる。アランに何か聞いたか?と尋ねると、子供の声や犬と答えると、老人はここには子供も犬もいないと話す。その後怪しい司祭風の男を博士は招き入れ、男はいかにも毒薬の瓶を博士に渡した。博士は嬉々としてそれを受け取った。アランは逃げゆく影を追い、広い庭にやってきた。そこには淋しい館が建っており、人里はなれ二人の娘と召使と共にアランの部屋に現れた男がひっそりと暮らしていた。男は病床で血を血をとうなされている娘を見舞い階段を降りると、銃を持った影に撃たれた。窓からそれを見ていたアランは慌ててドアを叩き館の中に入った。召使と共に男を介抱するが結局亡くなってしまた。悲しむもう一人の娘はアランを恨めしそうに見つめた。アランは宿に戻り男が置いていった本を開けてみた。それは、パウル・ボナ著「吸血鬼の不思議な話」と書かれていた。

どんな映画?

初めて吸血鬼が映画化されたのが「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922年)こちらはブラム・ストーカーの「ドラキュラ」を原作としていますが、この映画の吸血鬼はシェルダン・レ・ファニュ原作の「カーミラ」を元にしております。吸血鬼小説としては「カーミラ」の方がストーカーよりも先だって出版されていますが、こちらは女吸血鬼ものの元祖でドラキュラ伯爵ほど一般化されていません。

主人公のアラン・グレイは怪奇研究に没頭する夢想家。
虫取り網を背負って!?
それで何が捕まるかはわかりませんが
ミステリーハンターの彼はある日
とある不思議な村にたどり着きます。
ひなびた宿に泊まることにしたアラン。外では大鎌を持った老人が
鐘を鳴らしてます。
異様な雰囲気に包まれた部屋で
その夜アランは中々寝付けないでいました。

すると鍵を開けて誰がが入ってきます。
誰なのか?と声をかけると男は
「あの子を死なせてはならない」
と述べ机の上に包みを置き、
自分の死後開けることと書き置きし
出てきます。

アランは彼のために何かしないと
という使命感に燃えとりあえず村を散策。
とある建物の中に入ると
義足の男の影が勝手に動き回ったり
影だけが踊ったり、部屋の中は不気味なものでいっぱい。
するとそこに男が現れ、謎の老女を迎え入れます。

アランは影を追って公園に向かうと
そこには屋敷があり外から様子を伺っていると、夜中に宿を訪れた
主人が部屋の中で影に撃たれ倒れ込みます。

慌てて屋敷に入り込んだアラン。
そこには主人と娘2人がおり、
姉は血が欲しい~と寝込み
妹は父親の死にひどく落ち込んでいます。

娘のジゼルのことを頼まれたアラン。
アランは包みのことを思い出し開けることに。
そこには「吸血鬼の歴史」という本があり、吸血鬼と呼ばれる恐ろしい悪魔について書かれていたのです。

幽体離脱し、棺に入れられている自分を見るアラン。

この映画は、アイルランドの怪奇小説家、シェリダン・レ・ファニュ原作の短編小説「In Glass in Darkly」(1872年)は、5つの物語からなる怪奇小説で、その中の生き埋めになる話「ドラゴン・ヴォランの部屋」と女吸血鬼を題材にした「カーミラ」を合わせたストーリー構成になっています。
「カーミラ」は女主人公ローラのを語り部にした回想形式の小説で、女吸血鬼カーミラが狙うのは同性である女性。この映画でも吸血鬼は女性ですが若い美人ではなくババアです。

「カーミラ」を原作とする映画は他にロジェ・ヴァディム監督の「血とバラ」(1961年)、イングリッド・ピッドが主演した「バンパイア・ラヴァーズ」(1970年)などがありますが、「ヴァンパイア・ラヴァーズ」が一番原作に忠実だと思われますがハマー・フィルムっぽいB級感が漂っています。

原作とは違った味わいのある本作ですが、光の当て方に細工を施し、ハレーションを起こしたようなカメラワークと、素人同然で常に口を開けているようなボーッとした表情のジュリアン・ウェストことニコラ・ド・ガンズビュール男爵のミステリアスな雰囲気がマッチし、なんとも言えない独特な耽美観を持った怪奇映画に仕上がっております。

スタッフ・キャスト

監督はデンマークの映画監督カール・テオドア・ドライヤー。1928年に発表したサイレント映画「裁かるるジャンヌ」が非常に有名ですが、「吸血鬼(ヴァンパイア)」も現在では代表作の一つに挙げられています。
「裁かるるジャンヌ」では女優を美しく見せない、美化しないリアズムと顔のドアップの多用は当時としては珍しいものでした。その後長編映画としては「怒りの日」(1943年)、「奇跡」(1955年)、「ゲアトルーズ」(1964年)寡作ではありますが印象的な作品です。

撮影監督兼映画監督のルドルフ・マテは「裁かるるジャンヌ」(1928年)でも撮影監督を担当し、フリッツ・ラング監督「リリオム」(1934)、ヒッチコック監督の「海外特派員」(1940年)、「ギルダ」(1946年)、ノンクレジットですがオーソン・ウェルズ監督の「上海から来た女」(1947年)でも参加しています。その後監督としても活躍し「都会の牙」(1950年)、「武装市街」(1950年)などのフィルムノワール作品から、「地球最後の日」(1951年)などのSF作品なども手掛けています。

主演の青年アランを演じたのはジュリアン・ウェストという芸名のニコラ・ド・ガンズビュール男爵。フランス出身の貴族とされ、スポーツ選手やファッション誌の編集者として有名デザイナーに影響を与えた人物。この映画に出演した頃はまだ20代で、濃くエキゾチックな容貌はミステリアスな雰囲気を醸し出しこの映画にハマっています。俳優としての活動が親族に反対されたため芸名で出演していたそうです。その後アメリカに移住しファッション誌のエディターとして活躍されました。ゲイであったことも知られています。

まとめ

ミステリーを探し求めて地獄行き

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