魅惑の事故物件「テナント 恐怖を借りた男」

怪奇

ウチ出るんだよね と言われたお宅に泊まったことがあります。 たぶんわたくしのところには出ませんでした。

[原題]The Tenant
  仏吹替え版はLe Locataire
[製作年]1976 [製作国]フランス
[日本公開]劇場未公開
[監督・脚本]ロマン・ポランスキー
[脚本]ジェラール・ブラッシュ
[原作]ローラン・トポール
    「幻の下宿人」
[製作]アンドリュー・ブラウンズバーグ
[撮影]スヴェン・ニクヴィスト
[編集]フランソワーズ・ボノー
[音楽]フィリップ・サルド
[上映時間]126

主な登場人物

トレルコフスキー(ロマン・ポランスキー):
部屋を探していたポーランド系独身男。あるアパートを見つけ興味を持つがその部屋の前の住人は飛び降り自殺を図ったときかされる。

ステラ(イザベル・アジャーニ):
シモーヌの友人。メガネ女子。シモーヌが何故自殺を図ったのかはわからない。

その他の登場人物

ムッシュ・ZYズィー(メルヴィン・ダグラス):アパートの大家
コンシェルジュ(シェリー・ウィンタース):下宿屋のおばさん
ディオズ夫人(ジョー・ヴァン・フリート):苦情の署名を求めるアパートの住人
スコープ(ベルナール・フレッソン):トレルコフスキーの友人
マダム・ガデリアン(リラ・ケドロヴァ):苦情に悩まされている住人
スコープの隣人(ミシェル・ブラン):スコープに苦情を言う
事故にあう夫(クロード・ドーファン):妻の運転でトレルコフスキーを跳ねる
ベッティーナ(エヴァ・イオネスコ):マダム・ガデリアンの娘
ヴィヴィアン(ジョジアーヌ・バラスコ):トレルコフスキーの同僚女性
バダール(リュファス):シモーヌに告白しようとしていた男

あらすじ

ポーランド系の独身会社員のトレルコフスキーはパリで住む部屋を探していた。そこで見つけたのが古びたアパート。太った管理人のおばさんがらせん階段を登り部屋に案内してくれたのだが、前の住人はその部屋の窓から投身自殺を図り現在入院中だと言う。広さは申し分ないがトイレが共同で離れており礼金も高い。家賃交渉は直接大家に言ってくれと言うので下の階に住む大家に会いに行き交渉するが値下げには応じない様子。前の住人の若い女性シモーヌ・シュール嬢が生きている以上彼女が部屋に戻る可能性があると、トレルコフスキーは彼女の友人だと言って病院に行き彼女の様子を伺うことに。大部屋のベッドに包帯グルグル巻で放心状態のシュール嬢だった。全然知らない女だったがショックを受けていたところに彼女の本当の友人だというメガネでボサボサ頭のステラが訪れる。ステラはシモーヌの状態にショックを受け泣き出す。二人は病院を出てステラを落ち着かせる為喫茶店に入る。自殺の理由は結局わからず、その後二人で映画館に入っていちゃつくがステラとはそのまま別れる。結局シモーヌが死んだことを知り、トレルコフスキーはその部屋を借りることにする。クローゼットには彼女の服が残されており、窓の下を覗くと彼女が落下した跡がまだ生々しく残されていた。翌朝近所のバールに入りマスターに彼女のことを聞くと毎朝来ていたと言う。シモーヌの葬式に教会を訪れるとそこにはやはりステラが来ていた。新居に友人たちが訪れ深夜に騒いでいると上の階の住人が苦情を言いにやってくる。結局友人たちには帰ってもらいなるべく静かにしながら生活することに。隣人たちとうまくやっていこうと気を使うトレルコフスキーだったが、一つしかないトイレから住人たちに見張られている気配を感じ次第に疑心暗鬼に陥っていく。

どんな映画?

ローラン・トポールの原作「幻の下宿人」をロマン・ポランスキーが主演・監督で映画化。原作者のローラン・トポールは1979年のヴェルナー・ヘルツォーク監督の映画「ノスフェラトゥ」でレンフィールドを演じております。
日本では劇場未公開でしたがビデオでリリースされていました。長らくカルト映画として知られており、遂に2015年にDVD化され観ることができるようになりました。

パリで一人暮らしの部屋を探していたトレルコフスキー
ある古びたアパートを内見します。
そこはまだ人が住んでいるような感じで
管理人のおばはんが言うにはこの部屋に住んでた女性が
その窓から飛び降り自殺を図ったと言うのです。

まだ住人が亡くなっていないんじゃ又貸しでは
と思いますが内見し、なぜか気に入った
トレルコフスキー

しかしトイレが共同で一つしかないのと礼金の高さに
大家のじいさんに直談判しますが取り合ってもらえません。
飛び降りた女性は全く知り合いではありませんが
友人だと言って病院に見舞いに。

包帯グルグル巻でベッドに寝ているシモーヌの姿が、
ショックを受けていると彼女のホントの友人ステラが見舞いに来ます。
口を開けて何かを訴えかけるようなシモーヌ

泣き出すステラを慰めるため二人でお茶を飲み映画館へ
観ている映画は
ポランスキーと交流があったと言われる
ブルース・リー主演の「燃えよドラゴン」(1973年)
それを観ながらステラの胸をワシづかみするトレルコフスキー

その後シモーヌが亡くなり敢え無く事故物件になって
しまった部屋に住むことになったトレルコフスキー
部屋の中にはシモーヌの私物が残されています。

そして変な住民たちに悩まされるようになり…

住民の女性が障害があるという子供を連れてくるシーンがありますが、その少女役で登場するのがエヴァ・イオネスコ。
この映画の中ではセリフはありませんが、翌年に出演した映画で、当時若干12歳のエヴァ・イオネスコがマッパで濡れ場を演じ世界中に物議を醸しました。エヴァ・イオネスコは母親によるヌード写真集の撮影などの、当時の彼女の心情を描いた映画「ヴィオレッタ」(2011年)を自ら監督しています。

やっぱりイヤだよね…

何の因果かわかりませんが1977年にロマン・ポランスキー監督は当時13歳の少女に暴行したとして逮捕されました。

家に魅せられ、住人によって次第に正気を失っていく様は、1968年の「ローズマリーの赤ちゃん」でも描かれていますが、こちらの主人公はミア・ファローではなくポランスキー監督ご本人。
この映画が何故カルト映画なのかと言いますと監督のロマン・ポランスキーが主演しているだけでなく、化粧し女装しているから!!
きれい かわいいと自画自賛する姿は
まさに地獄絵図
必見であります。

スタッフ・キャスト

監督・主演は奇才ロマン・ポランスキー。1962年にポーランドで「水の中のナイフ」の脚本・監督で長編デビュー。ヨットの中の密閉空間で繰り広げられる夫婦+若い男の危うい三角関係を描き、高い評価を受けました。その後イギリスでカトリーヌ・ドヌーヴが次第に狂気に陥っていく「反撥」(1965年)、ドナルド・ブレザンズがひどい目にあう「袋小路」(1966年)を監督。1968年に「ローズマリーの赤ちゃん」を監督し一躍人気監督の仲間入りを果たします。しかし当時の妻であったシャロン・テートが妊娠中に殺害されるという事件が起こり、その後に撮影した「マクベス」(1971年)では女子供も容赦ない殺戮シーンが描かれました。1974年に監督した「チャイナタウン」でアカデミー賞監督賞にノミネートされ復活を果たしますが、1977年に少女への淫行罪で逮捕。この「テナント 恐怖を借りた男」はそんな間に監督した作品となります。

飛び降りた女性の友人役を演じたのはフランスの女優イザベル・アジャーニ。この映画の前年にフランソワ・トリュフォー監督の「アデルの恋の物語」(1974年)に出演し女優として高い評価を受けました。1979年にはハリウッドで名匠ウォルター・ヒル監督の「ザ・ドライバー」や、ドイツ・フランス合作でヴェルナー・ヘルツォーク監督の「ノスフェラトゥ」、アンドレ・テシネ監督のフランス映画「ブロンテ姉妹」などに出演し国際的に活躍しました。この映画のイザベル・アジャーニは、メガネにボサボサ頭で登場しその美しさが全く発揮されていないのも見どころです。

気難しそうな大家の爺を演じたのがベテラン俳優のメルヴィン・ダグラス。1932年にジェイムズ・ホエール監督のホラー映画「魔の家」に出演。巨匠エルンスト・ルビッチ監督作品では、マレーネ・ディートリッヒと共演した「天使」(1937年)や、伝説の女優グレタ・ガルボと共演した「ニノチカ」(1939年)に出演し当時は壮年のダンディな役柄でした。その後も多くの映画に出演しますが、1963年のマーティン・リット監督の「ハッド」で、ポール・ニューマンの父親役を演じアカデミー賞助演男優賞を受賞しました。また、1979年に出演したピーター・セラーズ主演の映画「チャンス」で再びアカデミー賞助演男優賞を受賞し晩年まで活躍されました。

管理人のおばさん役にシェリー・ウィンタース。 住人を糾弾しようと署名を集めるおばさん役のジョー・ヴァン・フリートは1955年に出演した「エデンの東」でジェームズ・ディーンの擦れっ枯らしの母親役を演じてアカデミー賞助演女優賞しています。 また、主人公のトレルコフスキーの友人の家で文句を言ってくる隣人役で「仕立て屋の恋」(1989年)のミシェル・ブランが出演しています。

まとめ

追体験で地獄行き

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