タコと美人妻「ポゼッション」(1981年)

怪奇

人が変わったようなとよく言いますが
元からそんな人だったかもしれませんヨ

[原題]Possession
[製作年]1981 [製作国]フランス・西ドイツ
[日本公開]1988年
[監督・脚本]アンジェイ・ズラウスキー
[原作]フレデリック・トゥーテン
[撮影]ブリュノ・ニュイッテン
[音楽]アンジェイ・コジンスキー
[上映時間]127

主な登場人物

マルク(サム・ニール):
単身赴任から帰ったアンナの夫。アンナの浮気に悩まされ肉体的にも精神的にも崩壊していく。

アンナ(イザベル・アジャーニ):
マルクの美人妻。何者かと頻繁に逢瀬を重ねており、マルクに離婚を迫っている。
ヘレン(イザベル・アジャーニ):
二人の息子ボブの先生。アンナに生き写し。

その他の登場人物

ハインリッヒ(ハインツ・ベネント):アンナの浮気相手
マルギット・グルックマイスター(マルギット・カルステンセン):マージ、アンナの友人

あらすじ

単身赴任から自宅に戻ったマルクだったが、妻アンナの様子が何かおかしい。妙によそよそしく自分を拒絶するような態度をとるのだ。二人の間には小学生の子供ボブがいた。マルクは企業の任務を完了し、引き止める会社側からの要求を拒否して費用の精算を受けその足で家に戻った。しかし家には誰もおらず困惑する。そこにアンナから今街にいてすぐには戻れないと電話が入り、ますます狼狽し家探しを始める。マルクは棚にあった本の中にはがきを見つける。そのはがきはハインリッヒという男からアンナ宛のものだった。マルクはアンナの唯一の友人であるマージに電話をし、アンナに男がいるのかと尋ねると戻るのが早すぎたとハインリッヒとの浮気を肯定する発言をする。取り乱し電話を落とすマルクにアンナから電話がかかり、今男と一緒にいる話がしたいので喫茶店に来てほしいと乞われる。別々の席に座り離婚の話を始めるマルクだが、もう二度とボブと会わないという発言にアンナは拒否反応を示すとマルクは激昂し、椅子を投げ倒し逃げるアンナを追いかけ、激しい言い争いになる。その後家を出て自暴自棄になったマルクは何も手につかず酒を飲みながらベッドから出ないで過ごすが、3週間ぶりに自宅に戻るとジャムでベトベトになっているボブを見つける。アンナが戻らないと言うボブを風呂に入れ、そのまま家に留まったマルクはアンナが戻ってくると眠るアンナのそばで眠った。男からの電話で目が冷めたマルクは相手にアンナを取り戻すと宣言するが、アンナは置き手紙にマージと相談すると書き残しいなくなっていた。マルクはマージに電話すると、アンナは来ていないと言い代わりにハインリッヒの電話番号を聞き出す。ハインリッヒの家に電話をすると女性が出て彼の不在とアンナは最近来ていないと発言する。ボブを学校に連れて行ったマルクは、ボブの教師があまりにもアンナに似ていて思わずアンナの変装かと勘違してしまう。その後ハインリッヒの家に押しかけるがやはりアンナはおらず、母親と同居しているという。関係は認めたハインリッヒにマルクは殴りかかるが返り討ちにあってしまう。家に戻るとアンナが戻ってきていたが、会っている男は一体誰なのかというマルクにアンナは狂ったように取り乱し始める。マルクはアンナを殴りつけ口から血を流したアンナは家を出て行ってしまう。暴言を吐きながら追いかけたマルクだが、結局アンナはそのままいなくなってしまう。マルクは謎の男の正体を探るべく探偵を雇うのだが…

どんな映画?

この映画は、第34回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールにノミネートされ、イザベル・アジャーニが主演女優賞を受賞しています。カルト映画として根強い人気があり、昨年40周年HDリマスター版でリバイバル上映されています。
まだドイツ統一前(1990年)の西ベルリンで撮影されています。

単身赴任から戻ったマルク。
一目惚れで結婚した美人妻のアンナが
出迎えますが何だか変?

あたなとはもう無理!

の一点張り。
さては浮気だな!と確信したマルクは
アンナの唯一の友達であるマージに電話。
やっぱり男がいた!!

暴力を厭わない泥沼のなじり合いに
発展する夫婦。
しかし二人には幼い息子ボブが…

豹変したようなアンナはボブも置き去りにして 家を空けてしまうように。
見かねたマルクはボブの世話をマージと
始めます。
ボブを学校に送り届けると待っていたのは
アンナにそっくりな教師ヘレンが。

マルクはアンナを取り戻すべく
浮気相手を探るのですが、

妻の浮気相手の驚愕の正体は!!??

人気のない地下鉄の構内で
何かに取り憑かれたように一人絶叫しながら暴れまくるアンナ

まだイザベル・アジャーニの存在を知らなかった子供の頃
この映画をテレビで観た時(子供がこんな映画見てんのかということは置いといて)  率直に

この女優さん すごい美人なのにこんな映画に出てかわいそう…

と思った程ひどいすごい映画です♪

監督のアンジェイ・ズラウスキーが、妻で女優のマウゴジャータ・ブラウネックとの結婚生活が破綻しその後離婚した経験も投影されているとのこと。
デビット・クローネンバーグ監督が1979年の映画「ザ・ブルード/怒りのメタファー」で、監督自身が妻との離婚劇の私怨をホラー映画としてぶちまけたとして知られていますが、こちらの映画も類似性があるとされています。

結婚したばかりの頃は、美しく優しかった妻がいざ離婚となるとまるで何かに取り憑かれたように醜く口汚く罵り喚き散らす。
そう それはまるで妻が悪魔にでも取り憑かれたようなの豹変ぶりなのです。

ドイツがまだ東西に分かれていた頃の民主的で経済が発展していたとされる西ベルリンで撮影されていますが、驚くのはかつての遺構と近代的な建物が両立する都市に人がぜんぜんいないこと。恐怖すら感じます。ほとんど人が乗っていない電車は、コロナ禍のロックダウン中の都市のようです。
都市の不気味さと、取ってつけたかのようなマルクのスパイ設定による後半の怒涛の展開。
イザベル・アジャーニの美しさと相反するような鬼気迫る狂気の演技、北斎の蛸と海女を連想させるような触手プレイ。(こんなひどい?役日本でやったのは若い頃の樋口可南子。)
ヨーロッパ女優の力量を感じさせる必見のカルト映画です。

サム・ライミ監督の2012年の映画「ポゼッション」とは全く別物です。

スタッフ・キャスト

監督はポーランドが生んだ鬼才アンジェイ・ズラウスキー。ポーランド映画界の巨匠アンジェイ・ワイダの助監督を勤めたのち、1971年に当時の妻であるマウゴジャータ・ブラウネックが出演する「夜の第三部分」の監督、この映画では脚本も担当。1972年に発表した「悪魔」がその暴力性にポーランド国内で上映禁止処分になります。そのためポーランドでの創作活動を一旦離れフランスで、ロミー・シュナイダー主演の映画を製作。その後「ポゼッション」を製作しその内容のインパクトからホラーファンからも知られるようになります。1985年には長年のパートナーとなるソフィー・マルソー主演で「狂気の愛」を製作し、その後もソフィー・マルソーは「私の夜はあなたの昼より美しい」(1989年)や「愛人日記」(1991年)、「女写真家ソフィー」(2000年)などの監督作に出演しています。また、1996年に発表した「ワルシャワの柔肌」は本国ポーランドで大ヒット。女子大生と教授の破滅的な恋愛を描き、やはり壮絶なラストに驚愕しますが時代が変わると暴力性も受け入れられるんですねぇ。

主演の夫マルクを演じたのサム・ニール。北アイルランド生まれニュージーランド育ち。初めての大役「オーメン」シリーズ完結編の「オーメン/最後の闘争」でのダミヤン役でしたがこれはシリーズ最大の大コケ。ですが、同年に出演したこの「ポゼッション」での演技が注目され、様々な国の映画に出演。1988年にオーストラリア映画「デッド・カーム/戦慄の航海」ではニコール・キッドマンのどうしょもない夫役を熱演。1993年に出演し、ジェーン・カンピオン監督、ホリー・ハンター主演のニュージーランド・オーストラリア合作映画「ピアノ・レッスン」では指をちょんぎる夫役を熱演(?)しています。また、同年にはご自身の代表作の一つである、スティーヴン・スピルバーグ監督の「ジュラシック・パーク」のアラン・グラント博士役で主演。来年の2022年にも「ジュラシック・ワールド/ドミニオン」で同じ役で出演を予定されており、現在までも活躍されています。ジェームズ・メイソンの若い頃を彷彿させるような濃いめの顔立ちで、狂気じみた演技が圧巻の俳優さんです。

妻アンナを狂気的に熱演したイザベル・アジャーニ。二十代半ばで最も美しかった頃のアジャーニがこの役?って感じですがこの映画の演技は高く評価され、セザール賞でも主演女優賞を受賞しています。セザール賞はこの後4回受賞しており、計5回と現在フランス映画史上最多記録している大女優です。この映画では透き通るような白い肌でゾッとするような美しさが特徴的でしたが、翌年に出演した「殺意の夏」(1982年)ではこんがり小麦色健康ヌードを披露していました。

まとめ

妻の浮気相手に地獄行き

コメント

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