狂った悪魔「ジキル博士とハイド氏」

怪奇

美人を見ておかしくなるのはよくあることですが、おかしくなり過ぎて何かすれば犯罪です。

[原題]Dr.Jekyll and Mr.Hyde
[製作年]1941[製作国]アメリカ
[日本公開]1949
[監督]ヴィクター・フレミング
[原作]ロバート・ルイス・スティーブンソン
[脚本]ジョン・リー・メイヒン
[音楽]フランツ・ワックスマン
[上映時間]113

主な登場人物

ヘンリー・ジキル/ハイド(スペンサー・トレイシー):
愛称ハリー、人間の二面性を引き出す薬の研究に没頭する医師/凶暴性を持つハリーのもう一つの人格。

アイヴィー・ピーターソン(イングリッド・バーグマン):
酒場の踊り子兼ホニャララ。街中で偶然ハリーに助けられる。

ベアトリクス・エメリー(ラナ・ターナー):
ハリーの婚約者、愛称ベア。エメリー卿の娘。

その他の登場人物

チャールズ・エメリー卿(ドナルド・クリスプ): ベアトリクスの父。
ビショップ・マナーズ(C・オーブリー・スミス)
サム・ヒギンズ(バートン・マクレーン):精神病患者
ジョン・ラニョン(イアン・ハンター):ハリーの友人。

あらすじ

1887年、若く美しい婚約者を持つ高名な医師ジキル博士は教会で悪態をつくヒギンズにカムデン病院のヒース院長を紹介した。男は精神疾患を患っているようだった。ジキル博士は婚約者のベアトリクスとその父エメリー卿に自分は病院に行ってくると告げ別れる。ジキル博士は病院で院長に、自分の開発した薬をその男に試したいと熱心に願い出るが、受け入れられなかった。屋敷に戻ったジキルは執事の話も聞かず、離れの研究室に入った。博士は自ら開発している薬の研究に没頭していたが、動物実験も中々うまく行っていなかった。エメリー家の食事会にも遅れてやって来る。ジキル博士は一体どういった研究をしているかという話題に、精神分野の研究で意識を分離する薬の開発だと話すが、具体的にどういったものなのか皆理解できない。婚約者のベアトリクスもよくわからない実験に不安を感じていた。博士は、友人のジョンと帰宅途中、男に襲われ足を怪我した女を助ける。彼女は酒場の女アイヴィー、上品ではなかったが大変美しかった。馬車で家まで送るが足を怪我していたため、ジキル博士が彼女を抱きかかえて部屋まで連れて行く。ベッドに座らせ、服を脱いでと言う博士に、服を脱ぎ始めるアイヴィー。診察の為だったのを勘違いしていたことに気づいた彼女は、大丈夫だと帰ろうとした博士を足が痛いとガーターベルトをはずしストッキングを脱いで見せる。診察代を払わなきゃというアイヴィーはガーターベルトと渡し博士にキスをする。友人のジョンが呼びに来てそのまま帰るが、ジョンに善の心が悪の誘惑に負けたと茶化される。ますます研究に没頭する博士はとうとう別人格を呼び覚ます薬を開発、自ら飲んでみる。すると顔つきが変貌し声まで変わり別の人格が現れた。

どんな映画?

二重人格を扱った代表的な作品であり何度も映画化されている「ジキル博士とハイド氏」(「The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde」)
原作はロバート・ルイス・スティーヴンソンの小説で1986年位イギリスで出版されています。

こちらの映画はアメリカで1931年に製作された同名映画のリメイクになります。

医師のハリーは精神病の患者を扱う中、人間には善と悪の二面性が必ず存在しその二つを分離させる薬の発明に没頭していました。

ハリーには心から愛して合っている美しい婚約者ベアがいましたが
彼女の心配をよそに研究のことが頭から離れない様子。

ぜひ人体実験したい!!

当然病院の院長は反対。しかし自分の開発した薬に自信があるハリー。
そんな時ハリーは夜中に街で
男に暴力を振るわれている女を助けます。

彼女はアイヴィー。
酒場で働くアイヴィーはとても上品とは言えませんが大変美しい女性でした。

そしてとうとうハリーは自ら薬を飲み
自分のもう一つの悪の人格ハイド氏を誕生させてしまうのですが…

アイヴィーに迫り来るハイド氏

当初の配役は悪女のアイヴィーをラナ・ターナーに、淑女のベアをイングリッド・バーグマンにキャスティングされていましたが、イメージが定着されることに嫌気がさしていたイングリッド・バーグマンがアイヴィー役を熱望。配役が変更されバーグマンのキャリアの中で転機になった作品でもあります。また、この後「郵便配達で二度ベルを鳴らす」(1946年)で映画史上に残る悪女を演じたラナ・ターナーですがここでは淑女を粛々と演じています。

単純に考えると善の人格は純粋で美しい女性を求め悪の人格が娼婦の女性を求めているように感じられますが、本質的に善の人格が娼婦を求めてしまったことに人格的な混乱が生じたと思われます。
薬の影響だけではなくアイヴィーに出会ったことにより生じた婚約者を愛する自分とアイヴィーに惹かれている自分が既に分裂しています。

誰しも自分の中にある二面性に気付いてしまう事により、犯罪が生まれるのかもしれませんね~

スタッフ・キャスト

監督のヴィクター・フレミングはアメリカ出身の映画監督。アメリカ史上に残る2つの傑作映画「オズの魔法使い」(1932年)と「風と共に去りぬ」(1939年)の監督として非常に有名です。1932年にジョン・フォード監督が1953年に「モガンボ」としてリメイクした映画「紅塵」を監督。プラチナ・ブロンドで有名なジーン・ハーロウとクラーク・ゲーブルを主演にヒットしました。1937年はスペンサー・トレイシーにアカデミー賞主演男優賞をもたらした「我は海の子」を監督。イングリッド・バーグマンが主演した「ジャンヌ・ダーク」(1948年)を最後にお亡くなりなりました。

ジキル博士とハイド氏を演じたのはアメリカの大俳優スペンサー・トレイシー。決してハンサムとは言えない風貌で小柄ですが、確かな演技力とハマり役により晩年まで良識的な人物役を好演されていました。1936年のフリッツ・ラング監督の「激怒」では、容疑をかけられ無実の罪で集団リンチにあい復讐する男を熱演。同年には1906年のサンフランシスコ大地震を扱った映画「桑港」で神父を演じています。また、「我は海の子」(1937年)と「少年の町」(1938年)で2年連続でアカデミー賞主演男優賞を初めて受賞する快挙を成し遂げます。18歳のエリザベス・テイラーがホントに美しかった「花嫁の父」(1950年)で父親役を演じ、1956年の「山」では名作山岳映画で無骨な山男演じ、1961年のスタンリー・クレイマー監督の「ニュールンベルグ裁判」では裁判長と難しい役を演じています。また「女性No.1」(1941年)、「アダム氏とマダム」(1949年)などで共演したキャサリン・ヘプバーンと長年のパートナーであったことは知られています。二人の最後の共演は1967年に再びスタンリー・クレイマー監督の「招かれざる客」で、黒人男性と結婚したいという娘の両親を演じています。

ジキル博士の婚約者を演じたラナ・ターナーはクールな表情の美人女優。ラナ・ターナーが悪女を演じて有名なのが前述しておりますデイ・ガーネット監督の1946年の映画「郵便配達は二度ベルを鳴らす」ですが、1952年のヴィンセント・ミネリ監督の映画界の裏幕物で有名な「悪人と美女」では飲んだくれからスター女優になる役を演じています。人気を不動のものにしていましたが私生活では恋多き女として鳴らしていますが、男の趣味はあまりよろしくなかった模様。1958年にラナ・ターナーの娘が彼女の愛人を射殺してしまう事件が起こります。大変なスキャンダルになりましたが、結局この事件は娘の正当防衛が認められ無罪。これ以後今度はダグラス・サーク監督の「悲しみは空の彼方に」(1959年)や「母の旅路」(1966年)などで母親役を演じています。

まとめ

美女にとち狂って地獄行き

コメント

タイトルとURLをコピーしました