元祖逃亡カップル「暗黒街の弾痕」

フィルムノワール

繁殖期のオスのカエルは動くものなら
何でも抱きつく習性があるので
よくメスと間違えられた魚が
被害に遭うみたいです。

[原題]You Only Live Once
[製作年]1937[製作国]アメリカ
[日本公開]1937
[監督]フリッツ・ラング
[脚本・原作]C・グレアム・ベイカー/ジーン・タウン
[製作総指揮]ウォルター・ウェンジャー
[撮影]レオン・シャムロイ
[音楽]アルフレッド・ニューマン
[上映時間]86

主な登場人物

ジョーン・グレアム(シルヴィア・シドニー):
エディの恋人。エディの担当をしてくれていたホイットニー弁護士のもとで働き、エディの出所を3年も待っていた。

エディ・テイラー(ヘンリー・フォンダ):
前科者。2度刑務所に入っている。ジョーンを心から愛しているが、シャバでは前科が付き纏ってしまう。

その他の登場人物

スティーヴン・ホイットニー(バートン・マクレーン):国選弁護人、テイラーの担当弁護士
ボニー・グレアム(ジーン・ディクソン):ジョーンの姉。妹を心配する。
ドーラン神父(ウィリアム・ガーガン):刑務所の神父。エディを案じていた。
ヒル医師(ジェローム・コーワン):エディに人質に取られる。

あらすじ

弁護士事務所で働くジョーンは、恋人のエディが釈放される事になったと聞かされ喜ぶ。エディの元に向かうため荷造りするジョーンに、ジョーンの姉は前科者と結婚なんてとあまり賛成な様子でない。しかし、幸せそうなジョーンを見送った。すでに二度刑務所に入っていたエディは、二度と刑務所に戻らないこと、次に刑務所に入る時は終身刑になると忠告される。今回も担当弁護士のホイットニーの尽力により出所できることとなり、エディも二度と戻らないと誓う。刑務所のドーラン神父にも祝福され釈放されたエディに駆け寄るジョーン。2人は鉄格子ごしに抱き合いキスをし、意気揚々と2人で出て行った。微笑ましく見送る神父をよそにホイットニー弁護士は一抹の不安を隠せなかった。結婚した2人は宿屋に宿泊し、庭を散歩していると池から2匹のカエルが顔を出した。エディはジョーンに、カエルはつれ合いが亡くなると自分も死ぬんだと話す。どうしてと尋ねるジョーンに、離れては生きていけないと伝えるとジョーンは駆け落ちカップルみたいだと笑い合った。エディはジョーンを抱き上げて部屋に戻った。幸せいっぱいの二人に宿屋の夫妻がエディの前科に気づき、深夜2人に部屋から出るように伝える。落ち込むエディをジョーンは気にしなくてもいいと励ます。運送会社の運転手として就職したエディだったが、前科を快く思っていなかった社長にちょっとした遅配を理由にクビにされてしまう。しかし、家を買うことになり姉を呼んで引っ越しの準備をするジェーンに解雇されたことを伝えられず、昔の悪い友人から誘われ迷ってしまう。再び運送事務所に行き、また雇ってもらえるように必死で頼み込むが、ムベもなく断られ殴りつけて出ていく。銀行に輸送車から現金が運ばれているところにガスマスクを付けた男が、ガス爆弾を投下。現金輸送車をそのまま奪い逃走した。夜中ジョーンの元に憔悴しきったエディが訪れ、まずいことになったと新聞記事を見せた。そこには銀行強盗で6人の犠牲者が出たこと、自分の帽子が犯人の遺留品として残されていたことが書かれていた。ジョーンはエディに無実なら自首してと訴えるるが、エディはどうせ信じてもらえないと問答している間に、押し入ってきた警官に捕まってしまう。

どんな映画?

この映画は、フリッツ・ラング監督の渡米後第二作品目となり、現在ではフィルム・ノワールの古典的作品となっています。まだ新人のヘンリー・フォンダと当時人気女優であったシルヴィア・シドニーが主演しております。

ホイットニー弁護士の事務所で
働くジョーンは
弁護士の尽力により

恋人のエディが3年ぶりに
釈放されるという知らせを受け
幸せいっぱい
すぐに刑務所にエディを
迎えに行く準備をします。

ジョーンの姉ボニーは
あんな前科者どこかいいの?
と呆れますが
聞く耳持たずでレッツゴー!
エディは二度目のムショ暮らし
らしくも戻ってくるなと
釘を刺されます。
刑務所の神父もエディを
見送ります。

再会に喜び合うジョーンとエディ
愛し合う2人はもう離れまいと
固く誓うのですが現実は…

鉄格子越しにイチャイチャしあうエディとジョーン

この映画は、フリッツ・ラング監督の「激怒」(1936年)に次ぐ渡米後第二作目となっておりますが、当時としては過激な暴力描写があり、問題のシーンが大幅にカットされているそうです。そんな不遇や、時代的なこともあって、初期の頃の大爆死映画としても知られています。 一方で1937年の日本でも公開されており、キネマ旬報で外国映画第9位となっております。ちなみに同年公開されている「激怒」は10位でこちらの映画の方が日本人に受けたのかもしれません。
日本でのタイトルは当時から「暗黒街の弾痕」でしたが、特にギャングものというわけではないです。タイトルの原題は「You Only Live Once」は、訳すと人生は一度だけとなり、DVDの別題として「ただ一度の愛」としています。

また、この映画は世界恐慌時代の伝説の殺人鬼カップル「ボニーとクライド」を元にした初めての映画だとされています。ただ、内容としては無差別殺人鬼カップルの逃避行というわけではなく、前科のある若者の社会復帰の厳しさや、不運や偏見に苛まれる恋人たちをメロドラマ調に描いております。
実際のボニー・パーカーの写真を見るとちょっと、シルヴィア・シドニーに似ている気がしますし、実物のボニーは金髪でしたが、細い感じが、ある意味フェイ・ダナウェイよりもそれっぽいです。

公開当時は興行的に失敗した映画となっていますが、現在ではフィルム・ノワールの古典的作品として知られています。特に銀行強盗のシーンは圧巻です。

ボロボロになりながらも絶望的な逃避行を続ける2人。シルヴィア・シドニーの愛の強さに心を打たれます。

スタッフ・キャスト

ヒロインを演じたシルヴィア・シドニーは、この頃スターでトップクレジットとなっております。1936年にヘンリー・ハサウェイ監督の西部劇「丘の一本松」でヘンリー・フォンダと共演。同年、フリッツ・ラング監督、スペンサー・トレイシー主演の「激怒」に出演。さらに同年にはアルフレッド・ヒッチコック監督の「サボタージュ」に出演する売れっ子ぶり。翌年にこの映画で再びヘンリー・フォンダと共演。この同年には、ウィリアム・ワイラー監督の「デッドエンド」(1937年)に、ハンフリー・ボガートと共演しています。また、1938年にフリッツ・ラング監督の「真人間」でも主演しております。戦中、戦後でキャリが少し衰退したのですが、巨匠たちに愛された女優さんでした。

ホイットニー弁護士を演じたのはアメリカ合衆国出身の俳優兼劇作家兼脚本家のバートン・マクレーン。1935年にギャング映画「Gメン」に出演、同年ウィリアム・ディターレ監督の「ギャングの家」(1935年)にポール・ムニが演じる医者が助ける負傷したギャングを演じています。また、同年マイケル・カーティス監督の社会派映画「黒地獄」(1935年)で、主演のポール・ムニに迫る殺人鬼を演じています。また、マイケル・カーティス監督、ボリス・カーロフ主演のホラー映画「歩く死骸」(1936年)、同監督の西部劇「黄金の罠」(1938年)、フリッツ・ラング監督の「真人間」(1938年)などに出演。ヴィクター・フレミング監督の「ジキル博士とハイド氏」(1941年)では、精神病患者役で出演し、同年ジョン・ヒューストン監督の「マルタの鷹」(1941年)では警部補を演じ、さらにらオール・ウォルシュ監督の「ハイ・シエラ」(1941年)や、1949年のジョン・ヒューストン監督の「黄金」でもハンフリー・ボガートと共演しています。性格俳優として、1930年代から1960年代にかけて多くの映画に出演されていました。

神父役を演じたのはアメリカ合衆国出身の俳優ウィリアム・ガーガン。1933年にジョーン・クロフォード主演の悪女映画の代表「雨」に出演して映画デビュー。マイケル・カーティス監督、ポール・ムニ主演の「黒地獄」(1935年)にも出演しています。また、アンソニー・マン監督の「仮面の女」(1946年)では、主人公ブレンダ・マーシャルの婚約者役で出演しています。

まとめ

不運が重なり地獄行き

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