美人ママと脅迫者「無謀な瞬間」

フィルムノワール

最近テレビでも女性の喫煙シーンは
滅多に見られなくなりましたねー。

[原題]The reckless moment
[製作年]1949[製作国]アメリカ
[日本公開]不明
[監督]マックス・オフュルス
[製作]ウォルター・ウェンジャー
[原作]エリザベス・サンゼイ・ホールディング
[脚本]メル・ディネリ/ヘンリー・ガーソン/ロバート・E・ケント/ロバート・W・ソダバーグ
[撮影]バーネット・ガフィ
[音楽]ハンス・J・サルター
[上映時間]83

主な登場人物

マーティン・ドネリー(ジェームズ・メイソン):
ネーゲルの相方。ルシアの娘ビーの件でルシアを脅迫しに来る。

ルシア・ハーパー夫人(ジョーン・ベネット):
娘と息子を持つ主婦。夫は単身赴任中。17歳の娘ビーが悪い男と交際していることを心配している。

その他の登場人物

ベアトリス・ハーパー(ジェラルディン・ブルックス):愛称ビー。ハーパー夫人の娘。美術学校に通っている。
トム・ハーパー(ヘンリー・オニール):ルシアの夫。子供たちの父親。単身赴任中
テッド・ダービー(シェパード・ストラドウィック):ビーと交際している美術商の男
デヴィッド・ハーパー(デヴィッド・ペア):ルシアの息子
ネーゲル(ロイ・ロバーツ):ドネリーの相棒

あらすじ

ロサンゼルスの郊外バルボアで平和に暮らしているハーパー家に事件が起きたのは、昨年のクリスマスの1週間前のこと。ハーパー夫人のルシアは、車でロサンゼルスに向かった。急いでホテルに入った夫人は受付で、テッド・ダービーを呼び出した。準備中のバーでダービーを待つルシアに、すぐにダービーが訪れた。素行の悪いダービーとルシアの17歳の娘ビーが交際しており、ルシアは交際をやめさせようとダービーを説得に来たのだ。ダービーはルシアに金銭を要求するが、夫人はそれを言えばビーも幻滅すると怒って帰宅した。ダービーはすぐにビーに電話をしていたため、帰ってきたルシアがビーに、いくらあの男はクズだと言っても聞く耳を持たなかった。ルシアは娘の望み通り、美術学校に入れたことが間違いの始まりだったと、夫トムの意見を尊重すれば良かったと後悔し始めていた。トムは橋建設の為国内外を飛び回っており、クリスマスにも帰れそうもなかった。娘のビーと車いじりが好きなまだ子供の息子デヴィッド、それに年老いた父親で暮らしているルシアは、心もとなかった。その夜ビーは、こっそり家を抜け出して、ボートハウスに向かった。ダービーと待ち合わせていたが、昼間の金を要求した話が本当だとわかりダービーとビーはもみ合いになった。ビーは持っていた懐中電灯でダービーを殴り、ダービーはよろめき桟橋から落ちてしまったが、ビーはそのまま家まで逃げ帰った。物音に気づいたルシアが、動揺しているビーに何があったか尋ねると、ダービーを殴って放置し逃げ帰ってしまったと伝える。ルシアはビーに部屋に戻るように指示し、別の懐中電灯を持ってボートハウスを見に行った。しかし、何も変わった様子はなかった。次の日の早朝ルシアは、潮が引きダービーの遺体が上がっているのを見つけてしまう。そこで、ルシアは…

どんな映画?

この映画は、アメリカの女流推理小説家のエリザベス・サンセイ・ホールディングが、女性誌で発表した小説「The Blank Wall」を元にメロドラマの名匠マックス・オフュルス監督が映画化したノワール調のメロドラマとなっていおります。

郊外で平和に暮らしていた主婦のルシア
その日は慌ててロサンゼルスに向かいます。
17歳の娘ビーが交際している
悪い男と別れさせるためでした。
男はやっぱりクズでルシアに
別れるのに手切金を要求してきます。
この話を娘にすれば大丈夫と帰宅しますが
そこは恋する思春期娘。
母親の言うことなんか信じません。

単身赴任中の夫の代わりに家を守るルシア
夜中こっそり娘のビーは家を抜け出し
男とこっそり会っていました。
しかし男が本当にクズだと知ったビーは
男ともみ合いになり殴りつけ海に転落
怖くなり見捨てて逃走
物音に気づいたルシアはビーから
話を聞き様子を見に行きますが
何もわからず。

次の日の早朝
ルシアが再び様子を見に行くと
男の死体が打ち上がられています。
ゲッ!!
やばいと思ったルシアは娘の為力を振り絞って
遺体を動かしボートに乗せ遺棄

当然そのままですむはずもなく
ある男がルシアを訪ねてきて…

男とビーの手紙を持っているとルシアを脅迫するドネリーでしたが…

この映画は、娘の犯した罪を隠蔽した母親が脅迫者と出会い、彼からの同情を得るようになるというちょっと都合のいいお話ですが、そこは主婦向けの小説ということもあり子育てに悩む母親の心理や、無条件に自分を助けてくれる男の存在などやっぱり主婦が見てキュンキュンさせる仕上がりになっております。 ルシアのしたことは決して許されることではありませんが、子供の為ならなんでもしようという母親の情は、自分がそんな立場なら同じようにしてしまうかもと考えさせられます。 当時の映画らしく、ことあるごとにルシアがスパスパタバコを吸うシーンが登場しています。女主人公の不安とイラついている心理を、如実に表しています。作中でジェームズ・メイソンに吸いすぎは体に良くないとまで言われてしまっています。 「無謀な瞬間」は、公開当時評価されつつも興行的には失敗しています。しかし現在は再評価され、マックス・オフュルス監督の傑作の一つとされています。

2001年のティルダ・スウィントンが主演した「ディープ・エンド」が同一原作となります。こちらの映画では、娘ではなく息子に設定が変えられています。

スタッフ・キャスト

主演の母親役を演じたのはアメリカ合衆国の女優ジョーン・ベネット。女優としてのキャリアがかなーり長く、愛らしい少女からファム・ファタール役、良妻賢母の母親役など晩年まで活躍された女優さんです。1933年にジョージ・キューカー監督の「若草物語」にエイミー役で出演。その後、ラウール・ウォルシュ監督の犯罪コメディ「アメリカの恐怖」(1936年)で、ケーリー・グラントと共演。1941年にフリッツ・ラング監督のサスペンス映画「マン・ハント」に主演のウォルター・ピジョンに協力する若い女性を好演。その後に同じくフリッツ・ラング監督のフィルム・ノワール「飾窓の女」で大学教授を翻弄する悪女を演じました。この役が大いに当たり翌年には同じキャストで「緋色の街/スカーレット・ストリート」(1945年)に出演しました。1947年にはアーネスト・ヘミングウェイ原作の「決死の猛獣狩り」、ジャン・ルノワールのノワール調のメロドラマ「浜辺の女」、フリッツ・ラング監督の「扉の陰の秘密」に立て続けに主演し40年代を代表する女優の一人となりました。その後はヴィンセント・ミネリ監督の大ヒットホームドラマ「花嫁の父」(1950年)で良妻賢母を演じ、優しいお母さんのイメージにシフトチェンジに成功。しかし、この映画でも製作を担当し、フリッツ・ラング監督やヒッチコック監督の映画を手がけた大物映画プロデューサー、ウォルター・ウェンジャーと結婚したことも大いに影響していますが、1951年にジョーン・ベネットの浮気を疑ったウェンジャーの相手の男性に発砲するという事件が発生。このスキャンダルはジョーン・ベネットのイメージを傷つけることになりました。映画での出演は、1955年のマイケル・カーティス監督、ハンフリー・ボガート主演の「俺たちは天使じゃない」での、未亡人役以外は特筆した出演は無くなりました。ですが、その後、1960年代後半からテレビドラマの「Dark Shadows」に出演。このドラマは日本で放映されることはなかったのですが、吸血鬼一家を題材にしたホラードラマで、女主人を演じカルト的な人気を誇り、1971年に同キャストで「血の唇」として映画化されています。年を取っても美しい瞳はホラー映画にぴったりで、1977年のダリオ・アルジェントの映画「サスペリア」が最後の映画出演となりました。

脅迫者ドネリーを演じたのはイングランド出身の俳優ジェームズ・メイソン。シギリスで1943年に犯罪ゴシックロマン「灰色の男」、1945年には心理ドラマ「第七のベール」に出演。1947年に出演したキャロル・リード監督のサスペンス映画「邪魔者は殺せ」に主演し、世界的に知られる存在に。同年にイギリスで、犯罪サスペンスの「霧の夜の戦慄」に出演しています。1949年にハリウッドでマックス・オフュルスのノワール調メロドラマ「魅せられて」に出演。同年、「ボヴァリー夫人」に出演し、「無謀な瞬間」はハリウッド3作目となります。その後、イギリスでファンタジーメロドラマの「パンドラ」(1951年)、ジョーゼフ・L・マンキーウイッツ監督のスパイ映画「五本の指」(1952年)、キャロル・リード監督のサスペンス映画「二つの世界の男」(1953年)、ジュディ・ガーランド主演、ジョージ・キューカー監督のドラマ映画「スタア誕生」(1954年)、ロバート・ロッセン監督の人種問題作「日のあたる島」(1947年)、アルフレッド・ヒッチコック監督、ケーリー・グラント主演のサスペンス映画「北北西に進路を取れ」(1959年)、スタンリー・キューブリック監督のロリコン問題作「ロリータ」(1962年)、シドニー・ルメット監督のスパイ映画「死者にかかってきた電話」(1966年)、テレンス・ヤング監督、チャールズ・ブロンソン主演のサスペンス映画「夜の訪問者」(1970年)、ハーバート・ロス監督のサスペンス映画「シーラ号の謎」(1973年)、ジョン・ヒューストン監督のスパイ映画「マッキントッシュの男」(1973年)、リチャード・フライシャー監督の人種問題作「マンディンゴ」(1975年)、サム・ペキンパー監督の戦争映画「戦争のはらわた」(1977年)、ウォーレン・ベイティ監督・主演の「天国から来たチャンピオン」(1978年)、フランクリン・J・シャフナー監督、グレゴリー・ペック主演のSFスリラー映画「ブラジルから来た少年」(1978年)、テレンス・ヤング監督、オードリー・ヘプバーン主演のサスペンス映画「華麗なる相続人」(1979年)、ガイ・ハミルトン監督のミステリー映画「地中海殺人事件」(1982年)、シドニー・ルメット監督、ポール・ニューマン主演の法廷ドラマ映画「評決」(1982年)など出演作は枚挙にいとまない名優ですが、残念ながらアカデミー賞の受賞はありませんでした。

まとめ

母は愚か でも最強で地獄行き

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