疑惑の花嫁「危険な女」

フィルムノワール

死ぬほど欲しい物を手に入れてしまうと
その後は、案外むなしかったりします。

[原題]The Locket
[製作年]1946[製作国]アメリカ
[日本公開]劇場未公開・ビデオ発売
[監督]ジョン・ブラーム
[製作]バートグラネット
[脚本]シェリダン・ギブニー
[撮影]ニコラス・ムスラカ
[音楽]ロイ・ウェッブ
[上映時間]86

主な登場人物

ナンシー・パットン(ラレイン・デイ):
富豪のジョンと結婚する花嫁。美しい女性がだ、経歴に謎が多い。

ノーマン・クライド(ロバート・ミッチャム):
画家。精神科医のブレアのもとを訪れ、ナンシーは危険な女だと忠告する。

その他の登場人物

ハリー・ブレア(ブライアン・エイハーン):精神科医
ジョン・ウィリス(ジーン・レイモンド):ナンシーの婚約者
ナンシー(シャリン・モフェット):10歳の頃のナンシー
ドリュー・ボナー(リカルド・コルテス):ナンシーの雇い主

あらすじ

富豪のジョンが結婚を決め、ジョンの邸宅で盛大に結婚式の準備が行われていた。相手の女性にマスコミも注目していた。彼女はナンシーと言い、とても美しかったが経歴など謎の多い女性だった。するとそこにジョンを訪ねてくる男がいた。彼はドクター・ブレアと名乗り精神科医だと言う。結婚の記事を読みジョンに話しておきたいことがあると言うのだ。ブレアはかつて5年間メアリーと結婚しており、三人の男の人生を破滅させた女だと述べた。にわかに信じられないジョンはメアリーの誕生日はいつかと尋ねると、ブレアは何とか言い当てる。ジョンはブレアの話を聞いてみることにした。ブレアは1938年頃、患者の療養先であるマイアミでナンシーと出会った。ナンシーが乗っていた自転車とブレアの自転車がぶつかり、倒れ込んだ彼女を家まで送ることに。それをきっかけにナンシーとの交際が始まり、当時36歳だったブレアは彼女との結婚を決めた。美しくセンスも良く完璧なナンシーと結婚し数週間を幸せに過ごした。しかしある朝、若い男がブレアの診療所を訪れ一変してしまう。画家のノーマンは患者ではなく、ブレアに助言に来たという。自分は、ナンシーによって、罪もないのに死刑になろうとしていると言うのだ。ノーマンは3年前に、自分の絵画教室に現れたナンシーに一目惚れしてしまう。彼女はナンシー・モルクと名乗り、友人に誘われて来たと言う。美しいナンシーを目の前にしたノーマンは、本心とは裏腹に彼女に冷たくし、追い出すようなことをしてしまう。後悔していると、レストランでナンシーが一人で食事をしているところに出くわす。素直に彼女に謝ると、ナンシーはすぐに打ち解けノーマンの絵画教室に通うことになる。ナンシーは雇い主のボナーをノーマンに紹介し絵を金持ちたちに彼の絵を売り出す機会を得るのだが。

どんな映画?

この映画は、1946年にジョン・ブラームが監督し、ラレイン・デイがサイコパス美女を演じたサイコ・スリラー映画になります。
日本では劇場未公開ですが、ビデオは発売されており、別タイトルが何故か「第四の求婚者」となっております。

金持ちの男ジョンの邸宅で結婚式の
準備が行われています。
幸せいっぱいのジョン。
なんせ新婦のナンシーは美人で聡明
まさに完璧な花嫁!

そこに突然の招かれざる客
男はブレアと名乗り精神科の医師だと言います。
誰?
と怪しむジョンに

「あの女は危険です。この結婚はやめるべきです。」

と忠告 
ん?何で?
フラれた腹いせか?

とりあえず、ブレア医師の話を聞くことに。
ブレアは5年前にナンシーと出会って結婚。
新婚の幸せいっぱいの頃
ブレアの診療所にある男が訪れます。

「あの女は危険です。この結婚はやめるべきです。」

あれ?何かデ・ジャブ?

因縁のロケットペンダントを握りしめ
「神様ありがとう もう一生何もいりません」
と瞳を閉じるナンシー。

この映画は、フラッシュバックの中にさらにフラッシュバックがあり、またさらにフラッシュバックがあると言う複雑な入れ子構造となっている作品として知られています。1946年と言う古い映画な為、日本では劇場未公開となっておりますが、心理的な倒錯を描いたサイコ・スリラーとして、小作ながらも実に面白い映画となっております。

タイトルのロケットは、ロケットペンダントのこと。ナンシーが少女時代に体験したトラウマにより、彼女が病的な盗癖を持つきっかけを作った小道具として登場します。美しく成長したナンシーでしたが、宝石に対する異様な執着を持ち、悪びれもせず窃盗! 個人的に、この映画の素晴らしい(?)ところは、主人公の女性が完全にサイコパス美女だと言うこと!宝石を盗んでも
何が悪いの?
とにっこり笑顔。それどころか男たちが、必要となくなれば完全に異常者扱いして切り捨て。この状況は完全にホラーです。ナンシーを演じたラレイン・デイの演技も素晴らしく、ジョンとどういういきさつで結婚することになったのかは不明ですし、多少強引な展開ですがラストに向かうまで飽きずに見ることができます。
どんな高価な宝石を盗んでも、欲しいものはたった一つ、あの「ロケット」なのでした。

スタッフ・キャスト

監督はドイツ出身の映画監督兼プロデューサーのジョン・ブラーム。1939年にヘンリー・フォンダ、モーリン・オサリバンが主演した冤罪映画「Let Us Live」を監督、同年にはヴィクター・マクラグレン主演の犯罪映画「リオ」を監督しています。1942年にホラー映画「不死の怪物」を監督。1944年にマール・オベロン、ジョージ・サンダースが出演した切り裂きジャックものの「謎の下宿人」、同年にフィルム・ノワール作品である「Guest in the House」を監督しています。また、1947年にはレイモンド・チャンドラー原作のフィリップ・マーロウシリーズの「高い窓」を監督し犯罪、ノワール調の映画を多く監督。60年代になるとテレビに活躍の場を移し、「ヒッチコック劇場」や「トワイライト・ゾーン」の多数のエピソードを監督されています。

主演の危ない美女ナンシーを演じたのはアメリカの女優ラレイン・デイ。1937年にキング・ヴィダー監督のメロドラマの傑作「ステラ・ダラス」で映画デビュー。1939年にメトロ・ゴールドウィン・メイヤーと契約し、「キルダーレ博士」シリーズでナースを演じ人気が出ます。1940年にアルフレッド・ヒッチコック監督の「海外特派員」に出演し注目され、その後ハリウッドで「明日のスター」1位に選ばれました。1942年にW・S・ヴァン・ダイク監督の遺作「マーガレットの旅」、1944年にセシル・B・デミル監督の「軍医ワッセル大佐」でゲーリー・クーパーと共演。また、1947年の「タイクーン」ではジョン・ウェインと共演しています。

精神科医のブレアを演じたのはイギリス出身の俳優ブライアン・エイハーン。1930年代から多くの映画に出演しハリウッドでも活躍しました。1953年のアルフレッド・ヒッチコック監督の「私は告白する」では検事を演じています。私生活では女優のジョーン・フォンテインと結婚していたことでも知られています。

まとめ

サイコパス美女に出会って地獄行き

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