返り討ち計画「突然の恐怖」

フィルムノワール

若い男の甘言には気をつけなければいけません。

[原題] Sudden Fear
[製作年]1952[製作国]アメリカ
[日本公開]1953
[監督]デヴィッド・ミラー
[製作総指揮]ジョーン・クロフォード
[製作]ジョー・カウフマン
[脚本]レノア・J・コフィ/ロバート・スミス
[原作]エドナ・シェリー
[撮影]チャールズ・ラング
[衣装]シーラ・オブライエン
[音楽]エルマー・バーンスタイン
[上映時間]110

主な登場人物

マイラ・ハドソン(ジョーン・クロフォード):
有名女流脚本家。父親の遺産もありかなり裕福な独女。

レスター・ブレイン(ジャック・パランス):
舞台俳優。マイラの夫となる。

その他の登場人物

アイリーン・ニーヴス(グロリア・グレアム):レスターの恋人
スティーヴ・カーニー(ブルース・ベネット):マイラの弁護士
アン・テイラー(バージニア・ヒューストン):マイラの秘書

あらすじ

ブロードウェイの人気女流脚本家マイラ・ハドソンの新作「天国への道の途中」のリハーサルの際、マイラは俳優のレスターを役に合わないと降ろしてしまう。レスターは怒りを露わにするが、舞台は大ヒットを記録した。マイラは意気揚々と一人シカゴ行きの列車に乗り自宅のあるサンフランシスコに向かった。バッファローの駅でレスターを見かけたマイラは彼を呼び止め、自分の個室に彼を招いた。気まずくなったのを気にしていたマイラはレスターに詫びたかったのだが、思いのほかレスターは潔い対応をしただけでなく、気さくで感じが良くマイラは楽しい時間を過ごせた。すっかりマイラはレスターに心を奪われてしまった。サンフランシスコでは秘書のアンと弁護士のカーニーが待っていたが、マイラがレスターを連れていたことに驚きを隠せなかった。マイラは女流脚本家として成功せていただけでなく、独身で父親の遺産もありとても裕福だった。自分の豪邸にレスターを招待したマイラ。レスターは書斎の口述録音機に驚いた。レスターの舞台俳優めいた甘い囁きにすっかり虜になってしまったマイラは、自分の友人たちにレスターを紹介しようと食事会を計画した。しかし当日何度レスターの家に電話しても出ず、とうとうレスターは姿を現さなかった。マイラが自宅に来たことがわかったレスターは、実は居留守を使っており、わざとらしく荷造りした格好を見せつけた。レスターはマイラに自分とあなたとは住む世界が違いすぎると話すが、マイラはあなただけだとぎゅっと抱き合った。結婚した二人は盛大な結婚式を挙げた。そのパーティーにカーニーの弟が若い女性を連れて来た。彼女はニューオークのアイリーンと紹介された。実はアイリーンはレスターの愛人だった為、新聞で結婚の記事を読んだアイリーンはレスターを追いかけてサンフランシスコにやって来ていた。レスターはカーニーの弁護士事務所を訪れ、シスコでは俳優の職もなく何か仕事がしたいとカーニーに紹介してもらえるように頼んだ。そんな中、レスターはマイラが自分の財産の内大金を基金につぎ込むと耳にする。

どんな映画?

この映画は、それまでワーナー・ブラザースで専属だった女優のジョーン・クロフォードが、主演のみならず製作総指揮を務めたオールドミス・フィルム・ノワール映画となります。

女流脚本家のマイラは
自ら脚本した舞台ですでに
決まっていた俳優のレスターを
私のイメージと合わないという
理由で降ろしてしまします。
おかげで(?)劇は大ヒット。

マイラはサンフランシスコの自宅に帰るため
一人汽車に乗ります。
そこでレスターを見かけたマイラ。
悪いなーと思っていたマイラは
レスターに声をかけます。

思いの他レスターは顔の割には
爽やかで快活マイラを楽しませます。
すっかり打ち解けた二人は
なんとスピード婚!?
マイラには父親の有り余る遺産と
脚本家としての印税がありました。

マイラの部屋には口述用の録音機があり
愛する夫の為遺書の書き換えを考えていました。
うっかり録音機がオンになってた模様
録音を聞いてみるとそこには
夫のレスターと以前から交際していたと
思われる女アイリーンとの会話が
ばっちり録音されていました。
二人は遺産を全部マイラから奪うため
事故に見せかけて殺そうと
計画を立てています。

簡単に殺されてたまるかこんちくしょー!!
ババアなめんなよ

レスターの裏切りに激しく動揺するマイラ。

40代後半に突入したジョーン・クロフォード。さすがにもうロマンスメロドラマは無理と思われ、ここで演じたのがこっぴどく裏切られる金持ちのオールドミスの役。しかも相手は贔屓目に見てもイケメンとは言えないジャック・パランス!かなりの歳の差にもかかわらず、最初のラブラブの雰囲気から一転どん底に突き落とされ、後半の涙ながらの醜態を晒す怪演はさすが大女優の風格です。

ジョーン・クロフォードはこの映画で3回目のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。惜しくも受賞はならず、ジョーン・クロフォードにとってこれが最後のノミネートとなりました。

スタッフ・キャスト

監督はアメリカ合衆国出身の映画監督デヴィッド・ミラー。1941年に「ビリー・ザ・キッド」(1930年)のリメイク版「最後の無法者」を、ロバート・テイラー主演で映画化。翌年にジョン・ウェイン主演の戦争映画「フライング・タイガー」(1942年)を監督しています。1960年にドリス・デイ主演のストーカー映画「誰かが狙っている」、1961年にスーザン・ヘイワード主演の「裏街」、1962年にダルトン・トランボ脚本、カーク・ダグラス主演の西部劇「脱獄」を監督されています。また、1973年に監督した「ダラスの熱い日」は、ジョン・F・ケネディ大統領の暗殺事件をドキュメンタリータッチで映像化し、この映画の監督として知られています。

製作総指揮に参加した主演のマイラを演じたのは、かつてアメリカを代表する女優の一人ジョーン・クロフォード。若い頃から人気があったジョーン・クロフォードですが、40年代に入り人気に翳りがで始めた頃から、それまで演じてきた若い女役からグッとイメージチェンジ!ご自身も40代に突入したこともあり、熟女役を熱演。1945年に主演した「ミルドレッド・ピアース」では、ビジネスに成功したものの娘との関係に苦悩するシンママを熱演し、この映画でアカデミー賞主演女優賞を獲得しました。かつて専属だったMGMからワーナー・ブラザースに移籍後第1作目でした。翌年にはジーン・ネグレスコ監督のメロドラマ「ユーモレスク」(1946年)に主演。この映画では、だいぶ歳の差がある若い男との恋愛に苦悩する熟女を演じ、1947年にノワール調の映画「失われた心」に主演しています。この頃まではまだ、美熟女を演じておりましたが、50年代に入りとうとう中年のオールドミス役を熱演。「突然の恐怖」と同様に、1956年のロバート・アルドリッチ監督の「枯葉」で、年下の男に翻弄される中年女性役を演じています。こちらの方はまさかのハッピーエンドでしたが。そしてこれらが、1962年の「何がジェーンに起こったのか?」での怪演につながります。70年代に入り、ベティ・デイヴィスとは違い映画に出演することは無くなってしまいましたが、20世紀のハリウッドを代表する女優の一人であったことは間違いありません。

マイラの弁護士役を演じていたブルース・ベネットは、元オリンピックメダリスト。1928年のアムステルダムオリンピックの砲丸投げで銀メダルを獲得しています。1945年に出演した「ミルドレッド・ピアース」で、ミルドレッドの最初のどうしょもない夫役を演じ、また、ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール主演のフィルム・ノワール「潜行者」(1947年)、ジョン・ヒューストン監督の「黄金」(1948年)に、あっさり殺されるアメリカ人役、ジョン・スタージェス監督のフィルム・ノワールの「ミステリー・ストリート」(1950年)などに出演しています。

まとめ

殺人計画を聞いて地獄行き

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