殴った女「拾った女」

フィルムノワール

殴った相手を好きになる女性は
Mだと思います♪

[原題]Pickup on south street
[製作年]1953 [製作国]アメリカ
[日本公開]1953
[監督・脚本]サミュエル・フラー
[原作]ドワイト・テイラー
[撮影]ジョー・マクドナルド
[音楽]リー・ハーライン
[上映時間]80

主な登場人物

スキップ・マッコイ(リチャード・ウィドマーク):
刑務所を出所したばかりのスリ師。ニューヨークの地下鉄で女のカバンから財布をするが…

キャンディ(ジーン・ピーターズ):
元彼のジョーイにあるものを届けてほしいと依頼されるが地下鉄でスキップに盗まれてしまう。

その他の登場人物

モー・ウィリアムズ(セルマ・リッター):普段はネクタイ売だが情報屋の裏稼業がある
ジョーイ(リチャード・カイリー):キャンディの元彼。実は共産主義のスパイ。
タイガー(マーヴィン・ヴァイ):スキップを目の敵にする警部
ウィノキ(ミルバーン・ストーン):警察

あらすじ

ニューヨークの満員の地下鉄の中、スリのスキップは若い女キャンディに近づき彼女のハンドバックから財布を盗みそのまま降車した。警察に尾行されているキャンディはビルに入りそこで財布が盗まれたことに気づき慌てる。公衆電話にかけこみ届け物の依頼を受けていたジョーイに連絡し、とりあえず戻って来いと指示を受ける。ジョーイは共産主義のスパイで警察にマークされていたが、キャンディはそうと知らず財布の中に入れていた政府の極秘情報のマイクロフィルムを運ぶ依頼を受けていた。ジョーイの元に戻ったキャンディは改めて彼から自分が運んでいたマイクロフィルムは重要なものだったと聞かされるが、共産主義のスパイであることは隠されたままだった。キャンディはもう自分たちは別れたのだと帰ろうとするがジョーイに泣きつかれスリを探すことにする。一方タイガー警部はスリのスキップを探すため警察に情報屋のおばさんモーを呼びつける。モーは新聞を使ったスリの手口から金を受け取ってスキップ・マッコイの名前を伝えた。スキップは川岸のレンタル釣具店用の小屋に入りロープで吊るし川の中に沈めていた冷蔵庫を引き上げた。戦利品を確認していたスキップ。その中にキャンディが運んでいたマイクロフィルムを見つける。そこに刑事のウィノキたちが乗り込みスキップをタイガー警部の元に連行した。出所後一週間でスリを働いたスキップはタイガー警部の追求をのらりくらりとかわししまいには殴ってみろと煽る始末。聞き兼ねたFBI担当官がスキップにマイクロフィルムのことを正直に話引き渡せばスリを不問にすると訴える。しかしスキップは2回もムショ送りにされたタイガーを恨んでおり、自分が盗んだ証拠などないと主張する。開放されたスキップは尾行をまき、ニューヨーク国立図書館に行く。マイクロフィルム閲覧室に新聞を閲覧するふりをして盗んだフィルムの中身をを確認し機密情報だと確信した。

どんな映画?

この映画は、20世紀フォックスが製作しサミュエル・フラーが監督したフィルム・ノワール映画となっております。

ニューヨークの地下鉄
満員電車の中でスリ師のスキップは
女性に近づき新聞を広げ彼女のバックを物色
財布に手を掛け何食わぬ顔をで地下鉄を
降ります。

財布をすられた女性キャンディは
とあるビルについた時
財布が無いことに気づきます。
慌てて依頼主の元彼ジョーイに電話。

キャンディは警察に尾行されており
財布の中身が政府の機密情報の
マイクロフィルムだったのです。

警察はマイクロフィルムが入った財布を
盗んだスキップの行方を追います。
またキャンディも盗んだ男を探すように
ジョーイから指示されます。
渋々スキップを探すキャンディ。
しかし彼女はジョーイが共産主義のスパイだとは
知らされていませんでした。

そして警察もキャンディも情報屋のモーから
スキップにたどり着くのですが…

電車の中でキャンディに近づくスキップ

この映画の魅力はなんと言ってもジーン・ピーターズの魅力ではないかと思います。ヒロイン役にはマリリン・モンローやシェリー・ウィンタースの名前も上がっていたそうですが、サミュエル・フラー監督はジーン・ピーターズの知性と度胸に惹かれヒロインに抜擢したそう。ブロンドに染めろという指示には従わなかったものの、ボッコボッコに殴られるシーンもその後の濃厚キッスも体当たりで演じています。
しかしこの映画のヒロインの扱いがひどい!
かなり強引な展開で反共もおまけみたいなエッセンスですが、そんな中でも一人寂しく死んでいく情報屋モーのエピソードが身につまされます。
見ごたえのあるフィルム・ノワール作品となっています。

スタッフ・キャスト

監督のサミュエル・フラーはアメリカ出身の映画監督。活動初期は戦争映画、フィルム・ノワール、西部劇などB級映画とみなされる作品が多かったのですが、事件記者出身の独特なストーリーセンスが海外などで高く評価され、ジャン=リュック・ゴダール監督の「気狂いピエロ」(1965年)に出演するなど無頼的な独特の風貌が特徴的な監督さんです。1949年にフィルム・ノワールの「ショック・プルーフ」の脚本を担当。その後西部劇の「地獄への挑戦」(1949年)で監督デビュー。「拾った女」を監督した翌年再びリチャード・ウィドマーク主演の戦争サスペンス映画「地獄と高潮」(1954年)を監督。また、1955年にリチャード・ウィドマークも出演していた映画「情無用の街」(1948年)をリメイクし舞台を日本に移した「東京暗黒街・竹の家」を監督。精神病院に精神病のふりをして潜入取材をする記者の末路を描いた「ショック集団」(1963年)、小児性愛を扱った「裸のキッス」(1964年)などの衝撃作、問題作を連投。観るものに強い印象を残す無骨な監督さんです。

主演のスリ師を演じたリチャード・ウィドマーク。1947年に出演したヘンリー・ハサウェイ監督の「死の接吻」で強烈な悪役を演じてセンセーショナルデビューをしたウィドマークでしたが、悪役が固定しないように善玉役に移行しつつある中、この「拾った女」はスリの役を演じており決して正義ではないフィルム・ノワールの主人公にピッタリでした。

踏んだり蹴ったり殴られたりされるけどあまり悲壮感のないヒロインを演じたジーン・ピーターズ。ミスキャンパス出身の知的美人。セクシーな表現での売出しを嫌ったため、中々いい役には恵まれませんでしたが、この「拾った女」でのヒロインはハスッパながら魅力的な女性を演じ代表作の一本となりました。同じく1953年にマリリン・モンロー、ジョセフ・コットンと共演した「ナイアガラ」では、貞淑でシオらしい新妻を演じました。また、同年日本では公開されていませんが再びジョセフ・コットンと共演した「A blueprint for murder」に出演し、この映画では一変悪役を演じています。また、「美人モデル殺人事件」のリメイク版「Vicki」などのフィルム・ノワールに立て続けに出演しましたが、翌年出演したジーン・ネグレスコ監督のロマンチック・コメディ「愛の泉」(1954年)で人気を博し再び脚光を浴びました。しかし1957年にハワード・ヒューズと結婚し引退されました。

非常に良い味を出していたのが情報屋のおばさんモーを演じたセルマ・リッター。この映画でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされました。名脇役としてジョーゼフ・L・マンキーウィッツ監督の「三人の妻への手紙」(1949年)や「イヴの総て」(1950年)に出演。また1954年にアルフレッド・ヒッチコック監督の「裏窓」ては大活躍しました。アカデミー賞に6回ノミネートされながらも獲得できなかった女優さんの一人です。

悪役を演じたリチャード・カイリーは1955年にリチャード・ブルックス監督の「暴力教室」で気の弱い教師を演じ、同じく監督の「ミスター・グッドバーを探して」(1977年)ではすっかり初老の父親役を演じています。また、1974年にスタンリー・ドーネン監督の「星の王子さま」で主演の飛行士を演じたことでも知られています。この映画では非常に若いリチャード・カイリーが見られます。

まとめ

スリにあって地獄行き

コメント

タイトルとURLをコピーしました