出さない切り札はただの紙「地獄の英雄」

フィルムノワール

我ながら低俗だとは思いますが
ゴシップ大好きです。

[原題]Ace in the Hole
[製作年]1951[製作国]アメリカ
[日本公開]1952
[監督・脚本・製作]ビリー・ワイルダー
[音楽]ヒューゴ・フリードホーファー
[上映時間]112

主な登場人物

チャールズ・テイタム(カーク・ダグラス):
酒癖と素行の悪さで失業中の新聞記者。片田舎の新聞社に押しかけてくる。傲慢な男。

ロレイン(ジャン・スターリング):
チャールズの妻。洞窟の側の錆びれたダイナー兼宿屋を夫とともに営んでいたが、内心嫌気がさしていた。

レオ・ミネザ(チャード・ベネディクト):
生き埋めになった男。

主な登場人物


ブート(ポーター・ホール):アルバーカーキ・サン紙の社主
ハービー(ボブ・アーサー):チャールズについてる若者

あらすじ

ニューメキシコ州の小さな新聞社アルバーカーキ・サン紙にやって来たチャールズは、元ニューヨークやシカゴなどの大きな新聞社にいた記者だったが酒や素行の悪さの為クビになっていた。この小さな新聞社で安く雇われてやると社主のブートに自家談判してきた。必ず特ダネをつかむと意気込むチャールズは、ある日ガラガラ蛇の取材の為、ロスバリオス郡に見習の若者ハービーと一緒に向かった。途中エクスデロという小さな街のミノザのスタンドに立ち寄ったが、老婆が必至で祈るばかりでガソリンも補給できない。先住民の洞窟に警察が来るのを見かける。何かあると感じた二人は、レオの妻から、洞窟が崩れ夫のレオ・ミノザが生き埋めになったと聞かされる。チャールズは警察を出し抜いてハービーとともに洞窟に入る。チャールズは何十人も遭難してりするよりたった一人いなくなる方が人々の関心を買うという。レオを見つけたチャールズは、レオにやさしく語りかけ、レオは先住民の墓を荒らしたたたりだと述べる。必ず助けると約束し、チャールズは壺を持ったレオの写真を撮り、新聞社に特ダネとして記事に載せることに。

どんな映画?

小さな新聞社アルバーカーキ・サン紙に乗り込んで来たチャールズ。
自信満々にブート氏に自分を雇えと売り込んできます。
しかし、もともと都会の新聞社にいたが素行と酒癖の悪さでクビになっていたチャールズには
たいしたスクープのない、のどかな田舎は退屈なものでした。

ある日ガラガラ蛇の取材に向かったチャールズは様子がおかしいのに気づき間す。
そこに通りかかったのが、洞穴に先住民の壺を掘りに行って落石、
閉じ込められたレオの妻ロレインでした。
エクスデロは先住民の地で何もない退屈な土地。
ロレインも嫌気がさしていました。

チャールズは洞穴に入り、レオに会います。
レオは1925年のケンタッキーで起きた事故を思い出し、マスコミに売り出そうとするのです。

これを機会に出ていこうとロレインでしたが集まってくる人々を見て
これはもうかる♪

レオを救出する為マスコミが殺到。
救助基金が設立され、人が集まり、人が集まると周囲には出店や遊園地ができ一代観光地に変貌していきます。

レオを助ける基金が設立され
一種のお祭り騒ぎに。

それぞれの思惑が交差し、事態は思わぬ展開を迎えるのでした。

この事故を目の当たりにしたチャールズが語るのが1925年にケンタッキーで実際にあった事故です。有名探検家のフロイド・コリンズが、ケンタッキー州の現在は国立公園になっているマンモス・ケーブの洞窟で足を岩に挟まれ身動きができなくなったのです。彼を助けようと報道が過熱したのですが結果的に救出することはできず、2週間程閉じ込められそのまま息絶えてしまったとのこと。

当時の実際の様子をNHKの50周年の特番で放映された「映像の世紀」で見ることができます。
人が閉じ込められているのに周辺には沢山の出店や特設の遊園地まで。

この事故がきっかけにこのマンモス・ケープを国立公園にしようという運動が高まったそうですが、ここではフロイド・コリンズの霊が現れるとか現れないとか…

スタッフ・キャスト


監督のビリー・ワイルダーは、この「地獄の英雄」と1950年に発表した傑作裏幕映画「サンセット大通り」の次の作品として発表しました。ちょうど「サンセット大通り」までコンビを組んでいた脚本、製作を担当していたチャールズ・ブランケットとコンビを解消してすぐでした。マスコミ腐敗を正面から皮肉った作品でしたが、当時その内容の過激さから興行的に失敗。しかし近年では傑作と再評価されビリー・ワイルダーの代表作の一本とされています。

主演のチャールズ・テイタムを演じたカーク・ダグラスは、1949年のマーク・ロブソン監督の「チャンピオン」でも同じような役を演じています。また、同年に出演したまたもや名匠のウィリアム・ワイラー監督作の「探偵物語」でも、やっぱりラストは同じ感じでした。この頃から堅物で硬派なイメージがつきました。

こちらではなかなかいい夫役を演じていました。

この映画を観てしまうと、2010年に起こったチリの鉱山事故を思い出してしまいます。こちらは救出の英雄譚として語り継がれ、2015年にはアントニオ・バンデラス主演で「ザ・サーティースリー/THE 33」として映画化されています。
今となってはこの「地獄の英雄」というタイトルが痛烈に効いてきていますね。

救えたのに個人のエゴや、名声、私利私欲のため救われない命がどれくらいあるのか、考えされられる映画です。

まとめ

マスゴミは地獄行き

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