命を救え!「いのちの紐」

ドラマ

新聞の人生相談は必ず読むタイプです。

[原題]The Slender Thread
[製作年]1965 [製作国]アメリカ
[日本公開]1966
[監督]シドニー・ポラック
[原案]シャナ・アレクサンダー
[製作・脚本]スターリング・シリファント
[音楽]クインシー・ジョーンズ
[上映時間]98

主な登場人物

アラン・ニューウェル(シドニー・ポワチエ):
いのちの電話の学生ボランティア。一人で当直担当した夜、自殺するというインガからの電話を受ける。

インガ・ダイソン(アン・バンクロフト):
自殺をほのめかす主婦。企業に社長秘書として勤め、夫と息子がいるはたから見ると幸せそうな女性だが…

その他の登場人物

コバーン博士(テリー・サバラス):いのちの電話の専門医師
マーク・ダイソン(スティーヴン・ヒル):インガの夫。インガの秘密を知ってしまい、インガを許せないでいる。
ジュド・リズリー(エドワード・アズナー)
チャーリー(ダブニー・コールマン)

あらすじ

2分に1回は自殺が発生する現代でそれを防ぐセーフティーネットの役割を果たす自殺防止ホットライン「いのちの電話」。ここでその日の当直を一人で担当することになった黒人大学生ボランティアのアラン。コバーン博士の電話番号は控えていたが、いきなり同時に2本の電話がかかってしまう。一本目は明らかに見当違いの電話だったが、もう一本は30歳の主婦で自分のことをバカだという。そして彼女の口から今多量の睡眠薬を飲んだと衝撃的な告白をされる。アランは彼女の電話をつないだまま別の電話で電話局に連絡をし逆探知の依頼とコバーン博士に電話するよう依頼する。再び電話を取り、彼女とできるだけ長く話そうと試みるアラン。どうして今日自殺しようとしたのか聞き出す。すると電話の主である主婦インガは上司が戻らず何もなかったからだと言う。社長秘書のインガは社長から今日は出社しないと連絡を受ける。その日は忙しくしていたかったインガだったが全くアテがはずれてしまった。それだけのことでと思わず言ってしまうアランは、自分では無理だと感じてしまう。電話局から連絡が入りインガの電話の交換所が判明し調べに行かせるというが、一方のコバーン博士には電話が繋がらないと言う。アランはパトカーですぐに迎えに行かせろと伝え再びインガと話を繋げようと試みる。彼女には知人には絶対に打ち明けられないような家族間の悩みがあったのだ。

どんな映画?

この映画は、それまでテレビドラマのプロデューサーをしていたシドニー・ポラックの第一回長編映画監督作品です。マ伝説のジャズミュージシャン、クインシー・ジョーンズの音楽に乗せてサスペンスフルタッチに展開し、濃厚なヒューマンドラマに仕上げています。

シアトルの自殺防止コールセンター
「いのちの電話」
ここでボランティアをしている黒人学生のアラン
その日の夜は一人で担当することに。

すぐに電話がかかり一本目は
悩み相談というより苦情の電話。
同時にもう一本取ると
主婦だという女性から自殺をほのめかす電話が!

彼女はインガと言い
もうすでに薬を飲んでしまったと
告白します。

なんとかインガとの電話を引っ張り
居場所を突き止めようと画策するアランでしたが
精神科医でもない彼に
思わず無理だという本音が

コバーン博士も到着しますが
そのままアランに電話を続けろと指示。
果たしてアランは彼女を救うことが
できるのか?

人生からチェックアウトすると言うインガ。

この映画に登場するインガの秘密は、映画を見ていただけるとおわかりになりますが、夫婦の事情としてはかなり深刻なものです。今はDNA鑑定があるのでもっと複雑なことになりかもしれませんネ。

「いのちの電話」は、イギリスでイングランド国教会の司祭チャド・ヴァラーによって、身近な人には言えない体や私生活、経済的な悩みによって自殺する人の増加を危惧して1950年代に始めたのが起源だそうです。ネットのように簡単に調べられるものが無い時代に無知から来る誤解による悲劇が起きないように設置され、日本においても1970年代から各都道府県で活動されているそうです。
各国でも実際に自殺に関する相談は10%ほどしか無いそうですが、自分を知っている人には絶対に知られたくない秘密を全く知らない人になら言えるというのはあると思います。個人的な悩みも案外相談してみると大したことがないこともあります。それでも本人からしたら死ぬほどの悩みです。死ぬ前に相談出来る人は、まだ何となる余地が見いだせるのではないかと。そういった意味で自殺防止のセーフティネットとして必要不可欠な活動だと思います。

現在コロナ禍にあって女性の自殺者が増えているそうです。どんな些細な事でも、思いつめる前に誰かに相談してほしいと願うばかりです。

スタッフ・キャスト

監督は名匠シドニー・ポラック。プロデューサーでもありつつ、元俳優なのでイケオジの風貌で名作映画や話題の映画に自らご出演されていました。「いのちの紐」を監督した後、1966年にシドニー・ポラック監督作では常連の当時を代表するイケメン俳優ロバート・レッドフォードとナタリー・ウッド主演の「雨のニューオリンズ」を監督。バート・ランカスター主演の異色戦争映画「大反撃」(1969年)、耐久ダンス大会(何のこっちゃ)を題材にした青春残酷映画「ひとりぼっちの青春」(1969年)など印象深い作品を次々監督。ロバート・レッドフォードとバーブラ・ストライサンドが共演した恋愛映画の傑作「追憶」(1973年)、ロバート・ミッチャムと高倉健が共演した珍作「ザ・ヤクザ」(1974年)、ダスティン・ホフマンが女装で奮闘する傑作コメディの「トッツィー」(1982年)、そんで1985年にはロバート・レッドフォードとメリル・ストリープが共演した「愛と哀しみの果て」でアカデミー賞作品賞を獲得しております。自らも御出演されることも多く、スタンリー・キューブリック監督の「アイズ・ワイド・シャット」(1999年)で変態セレブ役は印象的でした。

主演のシドニー・ポワチエはアメリカ出身の映画俳優。1963年に出演した「野のユリ」で黒人俳優として初のアカデミー賞主演男優賞を獲得したレジェンド的存在。1955年に出演したリチャード・ブルックス監督の「暴力教室」で注目され知名度を獲得。この映画の出演後、1967年に出演したのがそれぞれジャンルの違う名作映画3本に出演します。1本目は「暴力教室」では生徒役だったシドニー・ポワチエが今度は教師として問題のある学校に赴任し奮闘する学園映画「いつも心に太陽を」。2本目はノーマン・ジュイソン監督、ロッド・スタイガー共演の社会派サスペンス映画「夜の大捜査線」。3本目は白人の娘と結婚するという黒人医師を演じ、困惑する両親の姿を描いたスタンリー・クレイマー監督の「招かれざる客」は作品ともに高い評価を得ました。

自殺をほのめかす主婦役のアン・バンクロフトは1952年にマリリン・モンロー主演の映画「ノックは無用」でスクリーンデビュー。その後は美貌売りよりは演技力重視の実力派として数々の映画に出演。この映画でも私生活で苦悩する難しい役を演じました。1967年には御本人の代表作の一つである「卒業」で伝説のミセス・ロビンソンを熱演。ハーバート・ロス監督の女同士の友情愛憎劇映画「愛と喝采の日々」(1977年)やノーマン・ジュイソン監督の「アグネス」(1985年)の修道院長、アルフォンソ・キュアロン監督の現代版「大いなる遺産」(1998年)ではディンズモア夫人を演じています。

精神科医のコバーン博士を演じたハゲたおじさんはテリー・サバラス。何といてもテレビドラマの「刑事コジャック」のコジャック役で非常に有名です。日本でも今年お亡くなりになった森山周一郎さんの吹き替えで有名です。わたくしもテリー・サバラスといえばこの声からと思ってしまいます。1962年にJ・リー・トンプソン監督の「恐怖の岬」に探偵役で出演。同年にジョン・フランケンハイマー監督、バート・ランカスター主演の「終身犯」に出演しアカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。その後もダンディーな役から悪役まで多くの映画に出演されました。

まとめ

自殺相談で地獄行き  でも相談することは大事

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