裸足のシンデレラ「裸足の伯爵夫人」

ドラマ

シンデレラはフランス語で「サンドリヨン」、ドイツ語では「アッシェンプッテル」、イタリア語では「チェネレントラ」だそうです。

[原題]The Barefoot Contessa
[製作年]1954[製作国]アメリカ・イタリア
[日本公開]1954
[監督・製作・脚本]ジョゼフ・L・マンキーウィッツ
[撮影]ジャック・カーディフ
[音楽]マリオ・ナシンベーネ
[上映時間]137

主な登場人物

ハリー・ドーズ(ハンフリー・ボガート):
脚本家兼映画監督。スペインでマリアをスカウトし女優として売り出すのだが…

マリア・バーガス(エヴァ・ガードナー):
スペインの元踊り子。ハリーたちにより映画界に招かれ女優として花開く。しかし…

その他の登場人物

ヴィンチェンツォ・トルラート=ファヴリーニ伯爵(ロッサノ・ブラッツ): イタリアの伯爵。マリアを見染める。
オスカー・マルドゥーン(エドモンド・オブライエン): 汗かきの宣伝渉外。
エレアノーラ(ヴァレンティナ・コルテーゼ): 伯爵の姉、未亡人
カーク・エドワーズ(ウォーレン・スティーヴンス): 映画会社オーナー。傲慢で俗物的。
アルベルト・ブラバーノ(マリウス・ゴーリング): 富豪
ユーバンクス夫人(ベッシー・ラヴ): 石油で当てた富豪の妻

あらすじ

イタリアのラバロで雨の降る中、ある女性の葬儀が侘びしく行われていた。埋葬されていたのはファブリーニ伯爵夫人。彼女自身、半年前には知らなかった土地に墓碑の石像が建てられていた。そこに人々から少し離れた場所から傘も差さず、トレンチコートを着た男が立っていた。彼はハリー・ドーズ、ハリウッドで長らく脚本家兼映画監督として活躍していた。かつて伯爵夫人はたった3本の映画に出演し、その全ての脚本と監督を担当した。まだ伯爵夫人が、伯爵夫人でも女優でもなくマリア・バーガスという、マドリードの踊り子だった頃に出会った。3年前、少し落ち目の脚本家のハリーと宣伝渉外の担当で悪評の高い男オスカー・マルドゥーン、ハリウッド娘のマーナ、そして全員の雇い主であるカーク・エドワーズはマリアの踊りを見るためにスペイン、マドリードの二流のクラブを訪れていた。彼らはニュー・フェイスを探すため遥々ハリウッドからやって来たのだ。しかしマリアは一度だけしか踊らず、客の席にもつかないという。オスカーに楽屋まで呼びに行かせ彼は汗をふきふき向かった。マーラはカークの怒りを買い帰らされ、ハリーとも酒の件で言い合いになる。オスカーはのこのこ戻ってきて彼女は客とは付き合わないと突っぱねられたという。カークに命令され今度はハリーが楽屋に行く。扉が開いていたのでそのまま入ると姿が見えなかったが、衣装部屋のカーテンの裾から男の足を裸足の女の足が見えていた。ハリーはわざと彼女の靴を落とし物音を立て、気づいた彼女は起こった様子でスペイン語でまくし立てた。英語で話せというハリー。彼女は男を私のいとこだと言い、お客とは話さないと。ハリーはウォール街で成り上がったカークがカルフォルニアを買い映画製作に乗り出し、その第一回作品の新人女優を探していると彼女に話す。子供の頃から映画好きな彼女はその話に目を輝かせた。しかしここで彼女はスターで失敗はしたくないと言う。ハリーはローマでこっそりカメラテストを受ければいいとカークに彼女を紹介する。マリアは楽屋を出た後、慌てて戻りヒールを履き直す。

どんな映画?

ボギーと言えば?

トレンチコートですね〜
1942年の映画「カサブランカ」で着用したアクアスキュータム製のトレンチコート。
このトレンチコートは防水加工が施され
雨のシーンでも傘もささず立っている
ボギーの姿が印象的です。
この映画のオープニングでも
葬儀の中、トレンチコートを着た
ハンフリー・ボガートが傘もささずに佇んでいます。

ハンフリー・ボガート扮する映画監督のハリーは今まさに埋葬されている伯爵夫人のことを回想していました。
自ら監督した三本の映画でスターになり、シンデレラストーリーのようにイタリアの伯爵に見染められ結婚し、死んでいった女性マリアのことを。

マドリードの踊り子の噂を聞き、ニューフェースを探しにやってきたのは
映画制作に乗り出した成金、
落ち目の監督兼脚本家、宣伝マンなどです。

客の席にはつかないというマリアに会いに楽屋に向かうハリー。
楽屋では靴を投げ出し裸足で
男とチチクリ合っているマリア。

ハリーが映画の話をすると映画好きの
彼女は興味津々目を輝かせました。
貧しく靴も買えなかった少女時代
ハリーは一旦彼女を止めますが、マリアは裸足のままハリーと一緒に車に乗り
その先は映画界の成功談そのものとなりました。
しかし彼女に待っていた運命は…

ロマの人々の中で裸足で踊るマリアに
魅せられるヴィンチェンツォ・トルラート=ファヴリーニ伯爵。
主題歌はオリジナルの「裸足のボレロ」です。

回想のベクトルが
ハリー→オスカー→伯爵→ハリー
に変わっていく所は少し混乱しやすい部分ですが男の視点だけで彼女を見ています。それは結局は本当の彼女の気持ちは誰にも理解されないということと同じ。

子供の頃にテレビで観たわたくしには
後半の下りが、何が何やらさっぱりわからなかったのです!

何がそんなにショックだったの???

今ならそれは結婚前に言ってもらわないと詐欺だー!!となりますが。

エヴァ・ガードナーの官能的で情熱的な美しさにピッタリハマったこの映画
見出されたシンデレラガールは本当に幸せだったのか?
アイロニーに満ちた映画界の裏幕ものの傑作の一つです。

スタッフ・キャスト

主演のマリア・バルガスを演じたエヴァ・ガードナー。女性には珍しくパックリ割れた顎と黒い髪、エキゾチックな美貌と情熱的な眼差しで人気を博しました。ロバート・シオドマク監督のフィルム・ノワール作品 「殺人者」(1946年)でファム・ファタールを演じ、1951年のミュージカル映画「ショウ・ボート」で一気にブレイク後1950代に多く名作、話題作に出演しました。この映画同様に私生活も華やかで情熱的、まだブレイクする前には子役出身で当時人気俳優だったミッキー・ルーニーと結婚、離婚。フランク・シナトラの結婚、離婚でも有名です。1960年代以後は「カサンドラクロス」(1976年)などの群集劇に華を添える役や、B級作品への出演が多かったですがその爛々と輝く目力はいくつになってもご健在でした。

ひどく俗物的で汗っかきの中年宣伝マンを演じたエドモンド・オブライエン。1946年の「殺人者」、1947年の「二重生活」、1949年の「白熱」、1950年の「都会の牙」、1953年の「ヒッチ・ハイカー」、「二重結婚者」などノワール的な作品に多く出演。この「裸足の伯爵夫人」ではアカデミー賞助演男優賞を受賞しておまります。

マリアと結婚する伯爵を演じたのは、イタリア人俳優のロッサノ・ブラッツィ。1949年のマーヴィン・ルロイ監督の「若草物語」に出演。「裸足の伯爵夫人」の翌年にキャサリン・ヘプバーンがイタリア旅行中に恋に落ちる現地人役を演じた「旅情」で人気を博しました。

まとめ

玉の輿で地獄行き

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