奇書の読破に挑戦しようとしても
大抵挫折します。
[原題]Myra Breckinridge
[製作年]1970[製作国]アメリカ
[日本公開]1970
[監督・脚本]マイケル・サーン
[製作]ロバート・フライヤー
[原作]ゴア・ヴィダル
「マイラ・ブレッキンリッジ」
[脚本・製作]デヴィッド・ガイラー
[撮影]リチャード・ムーア
[音楽]ジョン・フィリップス
[上映時間]95
主な登場人物
マイラ・ブレッキンリッジ(ラクエル・ウェルチ):
元マイロン。性転換主従を受け男性から美しい女性に生まれ変わる。ジェンダー意識の改革の為、伯父の俳優養成学校に乗り込む。
レティシア(メイ・ウェスト):
キャスティング・エージェント会社の社長。社長室の奥にはベッドが用意され、面接はベッドの中という最強肉食BBA。
その他の登場人物
バック・ローナー(ジョン・ヒューストン):マイロンの伯父、ハリウッドの俳優養成学校校長。
メリー・アン(ファラ・フォーセット):ラスティの恋人
ランドルフ・スペンサー・モンタグ博士(ロジャー・C・カーメン):マイロンの担当医師。歯医者。
外科医(ジョン・キャラダイン):立会い人
医者(ジム・バッカス):入院中の医者
コヨーテ・ビル(アンディ・ディヴァイン)
ボビー(キャスリーン・フリーマン)
スタッド(トム・セレック):レティシアの若いツバメ
マイロン・ブレッキンリッジ(レックス・リード):男性の時のマイラ
あらすじ
手術台の上で、今まさに手術を受けようとする男性のマイロン・ブレッキンリッジ。医師のランドルフが見学人に拍手で迎えられ、手術室に入ってきた。ランドルフは一度切ったら二度と生えてこないんだ、覚悟はできているか?とマイロンに軽口のように確認した。マイロンは美しい女性マイラに生まれ変わり、アメリカ男を叩き潰す為ハリウッドに乗り込んだ。ハリウッドでは、伯父のバック・ローナーが演劇学校を経営しており、校長の身分をいいことに生徒に手を出し、甘い汁を吸っていた。校長室を訪れたマイラを、カウボーイに扮装し馬の剥製にまたがったバックが迎えた。マイラを入学希望者と思い、スターになりたいのか?と話始め、グロリア・スワンソンもここの卒業生だと嘯いた。シュワプ薬局でスカウトされたラナ・ターナーも卒業生で、セーターを着せたのも自分だと宣った。しかしマイラの名前を聞き、青ざめた。マイラは死んだマイロンの妻だと言い、亡き夫の財産を相続し50万ドルを要求した。甥が死んだと聞かされ馬から転げ落ちたバック。涙ながらにこの演劇学校の権利の半分は自分にあると訴えるマイラを苦苦しく見るバック。マイラは演劇学校の共同経営権を要求した。それはできないと突っぱねたバックに、それでは学校の講師になると言うマイラ。バックはしぶしぶ同意した。マイラはバックの愛人兼整体師兼生徒のアーヴィングに学校を案内されるが、その授業は奇妙なものばかりだった。一方校長のバックはマイラを怪しみ、調査することにした。
どんな映画?
アメリカの小説家兼劇作家兼脚本家兼俳優のゴア・ヴィダルのベストセラー奇書「マイラ」を、イギリスの映画監督兼俳優のマイケル・サーンが監督。性転換し男性から女性になったマイラをラクエル・ウェルチが演じ、伝説の怪物女優メイ・ウェストと、無名時代のファラ・フォーセットが出演していることで、現在ではカルト映画化されています。
マイロンは性転換手術(?)を受けて
ラクエル・ウェルチに!
演じるマイラに生まれ変わります。
心はマイロン 体はマイラの
二人になったマイラは
マイロンの伯父ローナーが
経営しているハリウッドの
俳優養成学校に乗り込みます。
マイラはローナーに
マイロンと結婚し夫に先立たれたと
説明し、経営権の半分を主張します。
冗談じゃないと言うローナーに
ではこの学校の講師になると
約束させます。
マイラの目的はアメリカ男どもに
鉄槌を加えること?!
メリー・アンの彼氏ラスティに襲いかかるマイラ
二十世紀の奇書とされるゴア・ヴィダル原作の「マイラ」は、1968年に発表され賛否両論を巻き起こしベストセラーになります。それを受けて映画化された本作でしたが、テーマが良くわからず、マイラが何をしたいのか微妙?今でこそ性別に対する固定観念への打破として捉えられるのですが、映画自体も豪華出演陣にもかかわらすヒットせず。ですが、伝説の女優メイ・ウェストの27年ぶりの銀幕復活や、ファラ・フォーセットの映画デビュー作であること、女性の男性レイプシーンなど現在ではカルト作品となっております。
マイロン役は、実際にゲイを公表されていた映画評論家レックス・リード。このお方は1978年のリチャード・ドナー晩「スーパーマン」に、御本人役で出演されています。80歳を過ぎた現在でも映画批評を続けられ物議を醸しているお方です。
ゴージャスばばあレティシアを演じたメイ・ウェストは当時78歳。1935年のアルフレッド・ヒッチコック監督のイギリス映画「三十九夜」で、メイ・ウェストのウェストのサイズは?というセリフで登場した、メイ・ウェストがこのお方です。
メイ・ウェストの衣装を担当したのが、ハリウッド伝説の衣装デザイナーのイーディス・ヘッドでした。
この映画には、多数の古い映画の映像が使用されており、冒頭には子供時代のシャーリー・テンプルの歌うシーンが登場するなど権利大丈夫?というくらい使われています。実際に訴訟、訴訟で大変だったらしく、確かに内容が内容だけに、シャーリー・テンプルも不愉快になりそうですね。
奇書と呼ばれる小説の映画化は非常に難しく、「マイラ」と並び1960年代の奇書テリー・サザーンの小説「キャンディ」も、映画化で豪華キャストだったにも関わらず不評。こちらも今でこそカルト作品として有名ですが、奇書の映像化の難しさが、奇書の奇書たる所以なんでしょうネ゙。
スタッフ・キャスト
主演のマイラを演じたのは、アメリカ合衆国のかつてのグラマー女優の筆頭ラクエル・ウェルチ。青春映画などの端役から、1965年にリャード・フライシャー監督のSF映画「ミクロの決死圏」に出演し、パッツンパッツンのボディスーツで、セクシーなボティラインを披露されておりました。この映画で注目される存在となり、同年出演した石器時代映画「恐竜100万年」(1966年)に出演しています。「恐竜100万年」は、ストップモーションの魔術師レイ・ハリーハウゼンが特撮を担当した恐竜映画の決定版となると同時に、ラクエル・ウェルチの石器時代ビキニ衣装が有名になり、「マイラ」でも登場しています。1994年のフランク・ダラボン監督の「ショーシャンクの空」にでは、穴を隠すポスターの一つとして登場しています。1967年に公開されたフランス・イタリア・西ドイツ合作のオムニパス映画「愛すべき女・女たち」や、イギリスでスタンリー・ドーネン監督のファンタジー・コメディ映画「悪いことしましョ!」(1967年)に出演しています。その後もイタリア・フランス合作のイタリア式コメディ「大泥棒」(1968年)、アメリカの西部劇「バンドレロ」(1968年)、フランク・シナトラ主演の刑事映画「トニー・ローム/殺しの追跡」の続編「セメントの女」(1968年)に出演し、内外で活躍されていました。1968年の西部劇「100挺のライフル」に出演し、この映画は元アメフトの大スターで俳優としても活躍し「マーズ・アタック!」(1996年)にもご出演されていたアフリカ系アメリカ人のジム・ブラウンとのラブシーンがあったことで知られています。その他、スリラー映画の「デンジャー」(1969年)では主演のダンサーを演じています。また、テリー・サザーンの同名小説の映画化「マジック・クリスチャン」(1969年)に端役で出演しています。1971年に出演したこちらもカルト映画として知られるイギリスの西部劇「女ガンマン 皆殺しのメロディ」では、素っ裸ポンチョが伝説的になっています。また、こちらも現在カルト映画化している当時流行していたローラー・ゲームを扱った「カンサスシティの爆弾娘」(1972年)に主演。この映画は子役時代のジョディ・フォスターが出演していることでも知られています。同年、リチャード・バートン主演の「青ひげ」(1972年)にも出演されています。1980年代には活躍の場をテレビに移し映画にはあまりご出演されていませんでしたが、これは、1982年の映画「吹きだまりの町」に主演が決まっていたにもかかわらず降板させられ、主演を若手女優のデブラ・ウィンガーに変えられた、年齢による不当降板だとして裁判を起こしたことにも起因しているようです。当時40歳を超えた女優がハリウッドでいかに役を獲得することの困難さを語っています。裁判には勝訴したのですが、かつて一斉を風靡したセクシー女優でありながら、その後メジャー映画で主要な役を獲得することができなくなりました。昨年の2023年に82歳でお亡くなりになられています。
俳優エージェント会社の女社長レティシアを演じたのは当時でも伝説の女優兼歌手兼コメディエンヌであるメイ・ウェスト。20世紀初頭の幼少の頃からショービジネス出演し、ブロードウェーのスターとして活躍しますが、1926年に主演・脚本・製作・監督した演目が好評を博すのですが、内容が過激で卑猥だと逮捕されてしまいますがこの逮捕がメイ・ウェストを良くも悪くも話題の人となり元祖お騒がせ女優としての地位を確立しています。映画に進出したのは当時としてもすでに遅く40歳近くなってのことで、1932年にジョージ・ラフト主演の「夜毎来る女」で映画デビューとなります。その後犯罪コメディ映画「わたしは別よ」(1933年)で初主演を果たし、この映画でケーリー・グラントを相手役に起用しています。また、メイ・ウェスト自身のブロードウェイの舞台「ダイヤモンド・リル」を元に製作されたため映画自体も成功を収めました。また「妾は天使ぢゃない」(1933年)でもケーリー・グラントを相手役に起用しメイ・ウェストのキャリアの中で最大のヒット作になったとのこと。この頃出演料の最も高い俳優の一人となったことでも知られていましたが、メイ・ウェスト自身の武器でもある際どいセリフと下品なジョークが、度重なる検閲により削除されるなど、ヘイズ・コードとの格闘に疲弊し、1940年ごろまでには映画界から遠ざかってしまいました。ショーや舞台に活躍の場を移し、精力的にツアーを行っていました。「マイラ」でもそうでしたが、マッチョな男ばかりが出演するショーは当時のラスベガスでも、観客も度肝を抜かれたそうです。また、1950年のビリー・ワイルダー監督の「サンセット大通り」で、ノーマ・デズモンド役のオファーがあったそうです。27年の長い沈黙の後なぜか出演したのは、この「マイラ」(1970年)でした。メイ・ウェストの最後の映画出演は85歳で脚本・主演した「結婚狂奏曲セクステット」(1978年)でした。豊満な肉体に、際どいジョーク、下品な下ネタをハスキーボイスで自信満々に繰り出す、20世紀を代表した女性エンターテイナーのお一人でした。
まとめ
結局何がしたかったの?で地獄行き
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