実はストーカーに狙われていたのに 全く気づかない人も存在するみたいです。
[原題]Letter from an Unknown Woman
[製作年]1948[製作国]アメリカ
[日本公開]1954
[監督]マックス・オフュルス
[脚本]ハワード・コッホ
[原作]シュテファン・ツヴァイク
[製作]ジョン・ハウスマン/ウィリアム・ドジャー
[撮影]フランク・プラナー
[編集]テッド・J・ケント
[音楽]ダニエル・アンフィシアトロフ
[上映時間]87
主な登場人物
リザ・ベルンドル(ジョーン・フォンテイン):
隣に引っ越してきたピアニストのステファンを、少女の頃から一途に想う。18歳になり想いを遂げるのだが。
ステファン・ブラウン(ルイ・ジョールダン):
ピアニスト。才能はあるが女にだらしなく軽薄。
その他の登場人物
リザの母(マディ・クリスチャンス):未亡人だが金持ちと再婚する。
ヨハン・シュタウファー(マルセル・ジュルネ):貴族、リザと結婚
ジョン(アート・スミス):話すことができないステファンの召使い
あらすじ
1900年頃のウィーン。ステファンは、決闘する覚悟を決めたと言い3時間後に迎えに来てくれと馬車を帰した。しかし当のステファンには、決闘の意志などさらさら無く、口のきけない老召使のジョンに逃亡するための荷造りを命じた。ジョンはすかさずステファンに手紙を渡した。何気なく開いた手紙は、ある女から自分と過去に何があったのかが書かれていた。女が少女だった頃、同じアパートメントにピアニストのステファンが引っ越して来た。女はリズと言い、引越しの日、ステファンの召使いジョンに挨拶し、家具の立派さからどんな男が越してきたのか胸を躍らせた。しばらくステファンの演奏だけを聞いて思いを馳せていたが、実物を見てリズは一目で恋に落ちてしまった。リズは人知れずステファンに近ずく為いい女になる努力をしていたが、一方のステファンは部屋に女ばかりを連れ込んでいた。アパートの部屋中のじゅたん叩きの日、リズはジョンを手伝い、こっそりステファンの部屋に忍び込んだ。物音を立ててしまい慌てて出て行こうとするリズ。ジョンに気づかれるが、ジョンは笑って見過ごした。その後、母親が裕福な男と再婚することになりリンツに引っ越すことになってしまう。こっそりアパートに戻ったリズは、ステファンの部屋の扉を叩いた。誰もおらず帰ってくるのを夜中まで待った。しかし、深夜にやっと帰ってきたと思ったら、女を連れ込んでいた為、リズは泣く泣くリンツに旅立った。数年後18歳になったリズは社交界デビューの年になり、若い軍人を紹介される。交際に両親は大喜びだったが、リズは婚約していると嘘をついて断ってしまう。両親と訣別し、再びウィーンに戻ったリズは、メゾンでマネキンとして働き始める。美しかったリズだが、他の男の視線を一切拒否しステファンを一途に想った。雪化粧に包まれた街中で、彼の部屋の前に立ち、とうとうステファンの目に止まり声をかけられた。デートをし夢のような時間をステファンと過ごしたリズ。とうとうステファンの部屋に入り、一夜を共にした二人だったが。
どんな映画?
オーストリアの作家シュテファン・ツヴァイクの中編小説「見知の女の手紙」を、メロドラマの巨匠マックス・オフュルス監督が初の映画化。オスカー女優であるジョーン・フォンテインが主演しています。
決闘をすることになったステファン
一旦家に帰り準備を始めます。
当然バックれる為の!
女好きでいい加減な元天才ピアニストのステファン
誠実さのカケラもありません。
そこに長年の執事であるジョンが
手紙を差し出します。
ジョンは話すことができません。
「この手紙をあなたが受け取る時
私はもうこの世にいないでしょう」
見知らぬ女からの手紙に
いきなり意味不明なことが書かれていて
驚くステファン。
手紙を読んでみると
その手紙はリズという女性からで
自分は少女の頃
隣に引っ越してきたステファンに
一目惚れしてしまったこと
一途に想っていたことが書かれていました。
さらに手紙を読み進めていくと…
陰からそっとステファンを見つめる少女時代のリズ
1922年に発表されたシュテファン・ツヴァイクの中編小説「見知の女の手紙」を元に、脚本のハワード・コッホがマックス・オフュルス監督らしいメロドラマに仕上げています。原作では男は女を最後まで思い出すこともないし、映画ではチフスで亡くなったことになっていますが、原作では1918年から、世界的に大流行したスペイン風邪です。
また、この小説は手紙を読んでいるように書かれている書簡形式の小説としても知られています。
主演のジョーン・フォンテインが、夫と共に設立したランバード・プロダクションの第1作目であり、これでもかというぐらいジョーン・フォンテインのどアップが見られます。 正直、当時アラサーのジョーン・フォンテインがローティーンの頃から演じているのにキツさを感じるのですが、そこは女優さん。力技で乗り切っています。 うっかりすると単なるストーカー女のような気もしないのですが、そこは美人のストーカーならOKというところでしょうか。 少女の頃から一人の男を一途に想う様は、少女漫画のようで切なくもあります。 また、原作にはないラストで彼女の永遠の片想いは報われたような気もします。
ラストに女主人公が、きちんと自分を知ってもらえたら、こんなことにならなかったのにと述懐していますが、18歳でステファンとやっと思いを遂げられた時、ちゃんと自分が少女の時から想っていたことを伝えられていれば、子供ができた時何がなんでも探し出して伝えられていればと。黙っていても覚えてもらえて、愛されるなんてないんだよなー、でも自分から好きとか言えないんだよなーと、自分も含めて少女漫画好き察してちゃんの琴線に非常に触れる映画であります。
スタッフ・キャスト
監督はドイツ出身の映画監督マックス・オフュルス。メロドラマを得意とし女性映画の巨匠として知られていますが、一部フィルム・ノワールの側面を持つ映画も撮られています。1934年にイタリアでイザ・ミランダ主演の「永遠のガビー」を監督。1937年にはフランスで早川雪洲も出演した映画「ヨシワラ」を監督し、ヒットしますが日本ではかなり批判的に見られたそう。その後、第二次世界大戦中にアメリカに渡り、ハリウッドで映画を制作。その中にジョーン・フォンテーン主演で「忘れじの面影」(1948年)、ノワール・メロドラマとして知られる「魅せられて」(1949年)、ジョーン・ベネット主演の犯罪映画が「無謀な瞬間」(1949年)などを監督しています。また、フランスで「輪舞」(1951年)や「たそがれの女心」(1953年)、マルティーヌ・キャロル主演で多額の制作費を費やした「歴史は女で作られる」(1955年)を監督してます。残念ながら54歳の若さでお亡くなりになってしまい、製作中だった映画「モンパルナスの灯」は、ジャック・ベッケルが引き継ぎ完成させています。
主演は美人女優としても知られ、オスカー女優でもあるジョーン・フォンテイン。実は東京生まれのジョーン・フォンテインは、イギリス人の両親と姉のオリヴィア・デ・ハヴィランドと共に日本からアメリカに移り住みますが、父親はまた日本に戻り別居状態に。その後女優としてのキャリアをスタートさせたジョーン・フォンテインは、プロデューサーのデヴィッド・O・セルズニックの目にとまり、1940年にアルフレッド・ヒッチコック監督の「レベッカ」に主演。一躍有名女優の仲間入りを果たし、翌年の1941年には同じくヒッチコック監督の「断崖」で、アカデミー賞主演女優賞を獲得しました。1943年にはオーソン・ウェルズと共演した「ジェーン・エア」、1947年にフィルム・ノワールの「アイヴィー」に出演。1948年には「忘れじの面影」の他三本の映画に出演しています。その後はニコラス・レイ監督の「生まれながらの悪女」(1950年)、女流監督アイダ・ルピノの「二重結婚者」(1953年)、フリッツ・ラング監督の「条理ある疑いの彼方に」(1956年)などの隠れた名作に出演します。しかし、人気に翳りが見え始めた頃、起死回生を狙って副制作まで担当したミステリー映画「影なき裁き」(1966年)が、結構な珍作となってしまし映画出演終了の憂き目にあってしまいました。
リズが恋焦がれた相手ステファンを演じたのがフランス出身の俳優ルイ・ジュールダン。1947年にアルフレッド・ヒッチコック監督、アリダ・ヴァリ主演のサスペンス映画「パラダイン夫人の恋」に、イケメン召使いの役で出演。翌年にはヴィンセント・ミネリ監督の「ボヴァリー夫人」(1949年)に出演。イケメン役が多かったのですが、1963年のオールスターキャストの「予期せぬ出来事」での演技が高評価。その後は1969年に出演したテレビ映画「鏡と悪魔」で演じたソレル博士が話題を呼び翌年には続編が作られました。
まとめ
切ない片想いで地獄行き
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