愛と哀しみのリフレイン「愛と哀しみのボレロ」

ドラマ

ボレロに始まりボレロに終わる。
良いお年を!

[原題]Les Uns et les Autres
[製作年]1981[製作国]フランス
[日本公開]1981
[監督・製作・脚本]クロード・ルルーシュ
[振付]モーリス・ベジャール
[音楽]フランシス・レイ/ミシェル・ルグラン
[上映時間]185

登場人物

●パリ

ロベール・プラ(ロベール・オッセン):
シモンとアンヌの息子、神父に拾われ弁護士になる。
シモン・メイヤー(ロベール・オッセン):
ユダヤ人のピアニスト、アンヌとと結婚。

アンヌ・メイヤー(ニコール・ガルシア):
楽団のバイオリニスト、シモンと結婚。戦後手放した息子を探し続ける。

パトリック・プラ(マニュエル・ジェラン):ロベールの息子、ポップス歌手になる
エブリーヌ(エブリーヌ・ブイックス):酒場の歌手、カールと関係を持つ/エディット(エブリーヌ・ブイックス): エブリーヌとカールの娘、努力しアナウンサーになる。
楽団の支配人(ジャン=クロードブリアリ)
ジャック(ジャック・ヴィルレ):教師の息子、ロベールの友人デブ
フランシス(フランシス・ユステール): 楽団の支配人の息子、医者になる。
リシャール(リシャール・ボーランジェ): ロベールの友人、定職につかない
ヴェロニク(ファニー・アルダン): フランシスの義母だが彼に乗り換える
フィリップ(ジャン・クロード・ブーチェ): ボクサー

●モスクワ

ボリス・イトビッチ(ジョルジュ・ドン):ボリショイバレエの審査員/セルゲイ・イトビッチ(ジョルジュ・ドン):タチアナとボリスの息子
タチアナ(リタ・ポールブルード):バレリーナ、ボリスの死後再婚/タニア(リタ・ポールブルード):セルゲイの娘、タチアナの孫

●ベルリン

カール・クレーマー(ダニエル・オルブリフスキ):音楽家、指揮者
マグダ・クレーマー(マーシャ・メリル):カールの妻、息子を戦争で亡くす

●ニューヨーク

スーザン(ジュラルディン・チャップリン):ジャックの妻、歌手/サラ・グレン(ジュラルディン・チャップリン):スーザンの娘、人気ポップス歌手
ジャック(ジェームズ・カーン):人気ジャズミュージシャン/ジェイソン・グレン(ジェームズ・カーン):サラの兄兼プロデューサー、ゲイ
晩年のジャックのベッドにいる女性(シャロン・ストーン)

あらすじ

人生には3つの物語しかない、しかしそれは何度も繰り返される その度ごとに初めての時のような残酷さで 
ウィラ・キャザー
1936年モスクワ
ボリショイ劇場のプリマドンナは2人のうちどちらかが選ばれることに。選ばれなかったタチアナは劇場を去ろうした時審査員のボリスに呼び止められ素晴らしかったと賞賛し、二人は結婚した。
1937年パリ
フォリ・ベルジェールのショーのオーケストラでバイオリンを弾くアンヌ。ショーの途中ピアニストが倒れショーは中断し、すぐに新しいピアニストのシモンが選ばれた。アンヌとシモンは演奏中幾度も目配せし、結婚した。
1938年ベルリン
20歳のカールはピアノの演奏後ヒトラー総統に称賛された。カールは身重の妻マグダと喜びあった。
1939年ニューヨーク
ジャズ・ミュージシャンのジャック・グレンは生まれたばかりの娘のために「サラ」という楽曲を作った。
そしてナチスドイツ軍がポーランドに侵攻しフランスとイギリスはドイツに宣戦布告した。第二次世界大戦が始まった。

1940年フランス シモンとアンヌは不安げに窓の外を見る。アンヌのお腹にはシモンの子供が宿っていた。軍が街を闊歩し否応なく戦争の色が濃くなった。カールは妻のマグダと幼い息子を残しパリで軍楽隊を指揮していた。占領群の軍楽隊長に任命されていた。酒場の歌手エヴリーヌはカールに目配せしていた。そして1941年が明けた。 1941年モスクワ ボリスは幼い息子セルゲイとタチアナを残し、徴兵された。 フランスの学校でナチの将校が教室を訪れ、生徒たちのズボンを下ろさせていた。一人の少年に目が止まった時、女教師ジャンヌがすかさずこの傷は割礼ではなくおできだと述べる。ユダヤ人狩りが始まり、強制収容所に送られていた。シモンとアンヌ、生まれたばかりの息子は列車に乗りイニー・アブリクール駅に到着した。シモンは赤ん坊だけは助けようと金の指輪と手紙と共に線路に置き列車は走って行った。翌朝赤ん坊は男に拾われたが、金だけ奪われ遠くの教会に捨てられた。赤ん坊は教会の司祭に拾われた。シモンとアンヌはマットハウゼン収容所に連れて来られ男女は引き離された。 1942年 スターリングラードは激戦地となりボリスは疲弊していた。ボリスの帰りを待つタチアナの元にボリスが死んだという知らせが届いた。 アメリカのジャックは軍楽隊の隊長としてイギリスに従軍していた。 収容所のシモンはガス室に送られ、アンヌはヴァイオリンを弾きながら幸せだった結婚式を思い出していた。

どんな映画?

4つの都市を舞台に3世代に渡る愛と哀しみを描き、それぞれの物語は独立しながらも時折交差し、ラストに集結します。また子供や孫を同じ俳優が演じていることも特徴的です。

モスクワ
プリマに選ばれなかったタチアナでしたが
審査員のボリスに見染められプリマではなくお嫁さんになり
息子に恵まれます。

パリ
楽団でヴァイオリンを弾いている
アンヌは同じく楽団の新しいピアニスト、シモンと恋に落ち
幸せな結婚をし、赤ちゃんを授かります。

ベルリン
若き音楽家のカールはナチスドイツ軍総裁の前で
演奏を披露し賞賛され
身重の妻と喜び合います。

ニューヨーク
ジャズシンガーのジャックは娘サラが
生まれたことを喜び
サラという楽曲を作り演奏します。

4つの都市でそれそれ結婚、子供の誕生と
人生の節目を迎えた家族でしたが
戦争の影が否応なく近づいてくるのでした…

子供の頃この映画を観て?と思ったのは、学校にナチが来てクラスの男の子全員のズボンを下ろさせるというシーンでした。 ユダヤ教男性の割礼の意味が分からなかったんですね。 いや未だに割礼してるかしてないかは全く区別はつきませんが。あまり他の映画では観たことなかったので個人的に非常に印象に残りました。

モーリス・ラヴェル作曲のバレエ曲「ボレロ」を、フランス人振付師モーリス・ベジャールの振り付けでアルゼンチン出身のバレエダンサーのジョルジュ・ドンが、男性ダンサーとして初めて主演ソロパートを踊り、世界的に知られる存在となりました。ジョルジュ・ドンは1992年に45歳の若さでお亡くなりになっていますがこの映画のジョルジュ・ドンは素晴らしく、最初に登場するボリスとその息子セルゲイの二役を演じています。

「ボレロ」という楽曲の特徴として最初から最後まで同じリズムが繰り替えされるというものがありますが、時代が変わり世代が変わっても繰り返される出会いと別れは人の心に響きます。

スタッフ・キャスト

監督はパリ出身のクロード・ルルーシュ。1966年にダーバーダー・ダバダバダーで有名な「男と女」でカンヌ国際映画祭パルム・ドールとアカデミー賞外国語映画賞を受賞し一躍有名映画監督の仲間入りを果たし、1968年にフランスのグルノーブルで行われた冬季オリンピックの記録映画である「白い恋人たち」を監督。また、1973年には西ドイツミュンヘンで行われたオリンピックのレスリングパートを担当しています。同年リノ・ヴァンチェラ主演のサスペンス映画「男と女の詩」を監督。翌年の1974年に監督・脚本・制作を担当した「マイ・ラブ」はシャルル・デネルとマルト・ケラーが3世代の人物を演じ「愛と哀しみのボレロ」と同じように子供を同じ俳優が演じると言う手法を取っています。こちらの映画はラブストーリーですが、ラストで未来にぶっ飛ぶという中々のとんでも映画となっております。エブリーヌとエディットを演じたエブリーヌ・ブイックスは「愛と哀しみのボレロ」(1981年)撮影当時の監督の妻でした。

ユダヤ人ピアニストのシモンとその息子であるロベールを演じたロベール・オッセンはフランスの俳優兼映画監督です。1962年にロジェ・ヴァディム監督の「悪徳の栄え」に出演。その後歴史大河恋愛小説の映画化で知られる「アンジェリック」シリーズにヒロインアンジェリックの夫役として出演し広く知られています。また監督としては1969年のマカロニウエスタンの「傷だらけの用心棒」を監督。この映画では「アンジェリック」で主演のアンジェリックを演じていたミシェル・メルシェをヒロインに迎え、自ら監督・脚本・主演を担当されています。残念ながら昨年の大晦日にコロナでお亡くなりになられたそうです。

全世代で本人役で登場したシモンの妻アンヌを演じたのはフランスの女優で映画監督のニコール・ガルシア。
ジャズミュージシャンのジャックの妻と娘を演じたのが、喜劇王チャールズ・チャップリンの愛娘ジェラルディン・チャップリン。1965年に出演した「ドクトル・ジバゴ」のトーニャ役がよく知られています。アメリカ出身ですが、イギリス、スペインなどヨーロッパ映画への出演も多く「クリスタル殺人事件」(1980年)にも出演しています。
ジャックとその息子ジェイソンを演じたのはアメリカ人俳優のジェームズ・カーン。役のジャック・グレンはグレン・ミラーをモデルにしていると言われていますが、グレン・ミラーは第二次世界大戦中に行方不明になっていますが、このジャックは老齢まで生きシャロン・ストーンを侍らせるという豪快ぶりを発揮しています。
カラヤンをモデルにしたという指揮者のカールを演じたのはポーランド出身の俳優ダニエル・オルブリフスキー。フォルカー・シュレンドルフ監督の「ブリキの太鼓」(1979年)の出演で知られています。
カールに寄り添う妻を演じたのはマーシャ・メリル。「サスペリアPART2」(1975年)では初っ端から殺されています。
アンヌの息子で弁護士になったロベールの息子を演じたマニュエル・ジェランは俳優のダニエル・ジェランの息子です。
ロベールたちの友人でボクサーになるフィリップを演じたジャン・クロード・ブーチェは実際のプロボクサーでその後俳優に転身しています。

まとめ

繰り返されるのはある意味地獄で地獄行き

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