夫婦の危機「軽蔑」(1963年)

ドラマ

朝まで大好きだったのに
夕方に大嫌いになるって
高校生くらいの頃はよくありましたねー

[原題]Le Me’pris
[製作年]1963[製作国]フランス・イタリア・アメリカ
[日本公開]1964
[監督・脚本]ジャン=リュック・ゴダール
[製作総指揮]ジョルジュ・ド・ボールガール/カルロ・ポンティ/ジョーゼフ・E・レヴィーン
[原作]アルベルト・モラヴィア
[撮影]ラウール・クタール
[編集]アニエス・ギュモ
[音楽]ジョルジュ・ドルリュー/ピエロ・ピッチオーニ
[上映時間]102

主な登場人物

ポール・ジャヴァル(ミッシェル・ピコリ):
ローマで成功したフランス人劇作家。28歳の美しい妻カミーユがいる。

カミーユ・ジャヴァル(ブリジット・バルドー):
ポールの28歳の美人妻。元タイピスト。

その他の登場人物

ジェレミー・プロコシュ(ジャック・パランス):アメリカ人映画プロデューサー
フリッツ・ラング(フリッツ・ラング):映画監督
フランチェスカ・ヴァニーニ(ジョルジア・モル):プロコシュの秘書兼通訳
ラング監督の助監督(ジャン=リュック・ゴダール)

あらすじ

ベッドに裸でうつ伏せになって寝ている妻カミーユは、夫ポールに問いかける。「私の体好き?」「君の全てを愛している」と答えるポール。チネチッタの撮影所で劇作家のポールはアメリカ人の映画プロデューサー、プロコシュと通訳の女性を通じて話をするがうまく製作意図が噛み合わない。ポールはプロコシュに見込まれ、ドイツの巨匠映画監督フリッツ・ラング監督の映画に参加していた。ポールはなぜ自分をという問いかけにプロコシュは金が必要だと思うからと言う。美しい妻を持っている男は金がかかるのだと。試写室で映画を熱く語るフリッツ・ラング監督。手がけいている「オデッセイア」という映画は古代ギリシャでの神とユリシーズとの戦いだと。ミネルヴァ(ローマ神話の戦いの女神)ですねと言うポール。ユリシーズの守護神でネプチューンは彼の宿敵だと言う。この芸術が理解できるかというラング監督の問いかけに、神々の彫刻が並ぶ中、裸で泳ぐ女の姿に喜ぶプロコシュ。あれは誰だと言うとペネロペだと、ユリシーズの妻は好色だったと言う。試写終了後、怒り出すプロコシュ。見せられた脚本と全然違うと言うのだ。怒り狂って物を投げつけるプロコシュ。プロコシュは通訳の背中で小切手を切りながら、ナチスは小切手帳を「リボルバー」と呼んだと述べ、ポールに仕事を引き受けるかと聞き出ていく。ラング監督はヘルダーリンの詩を通訳に諳んじる。ポールはプロコシュに妻のカミーユを紹介する。その後フリッツ・ラングに妻を紹介。妻にディートリヒの西部劇の監督だと紹介する。監督は「M」の方が好きだなと話すとカミーユも話を合わせる。フェラーが体重計に乗る場面が好きだとポールは監督に話す。プロコシュが通訳を通じてカミーユを飲みに誘う。オープンカーの後ろには乗れないとカミーユだけを乗せ後からポールと通訳の女性が自転車できた。するとカミーユとプロコシュが仲良さそうに庭を散歩している。30分も待ったと不機嫌になるカミーユ。ポールはタクシーが事故にあってと話すが、プロコシュはサングラスを上げ下げしてやらしい目でカミーユを眺める。ポールはトイレに行ってくると建物の中に入ると通訳の女性が泣きながら黄色いニットから赤いニットに着替えていた。ポールは彼女に冗談を言いながら慰めるが、それをカミーユに見られてしまう。

どんな映画?

「暗殺の森」(1970年)の原作者で知られるアルベルト・モラヴィアの小説を、ジャン=リュック・ゴダールが監督、フリッツ・ラングがご本人役で出演されていることでも有名です。

ローマで映画の脚本家として
成功していたフランス人のポール
彼には若く美しい妻カミーユがいます。
撮影所でアメリカ人プロデューサーの
プロコシュと美人秘書と待ち合わせます。
プロコシュはドイツの巨匠映画監督
フリッツ・ラングの映画 「オッデセイア」が難解なため
もっとエンタメ系にしてほしいと
脚本の直しをポールに依頼していました。

プロコシュはポールはこの仕事を
引き受けるだろうと言います。

美人の妻には金がかかるから♪

見透かされたポールはプロコシュに
妻カミーユを紹介。
プロコシュの家に誘われますが
車は二人乗り。
ポールはカミーユにプロコシュと一緒に行くように言って
自分は後からタクシーで追いかけます。

一足遅れて到着したポール
プロコシュとカミーユが二人で
散歩しているところを見ます。
カミーユの様子が何か変?
その後アパートに戻った二人は
夫婦喧嘩をはじめ…

黒髪のかつらを被ったカミーユ ポールに殴られ項垂れている。

この映画は、2022年9月にお亡くなりになったフランス映画の巨匠ジャン=リュック・ゴダール監督の長編映画第6作目とされています。当時女優のアンナ・カリーナと結婚していたゴダール監督ですが、1965年には離婚されています。 映画「軽蔑」では、映画人として成功すればするほど、夫婦生活がうまくいかなくなるという自己の私生活も投影されていると言われています。 また、劇中フリッツ・ラング監督が撮っていた映画「オデッセイア」のユリシーズ(オデュッセウスの英語読み)と、その妻ペネロペとの夫婦問題も絡めています。

映画の中で、フリッツ・ラングがマレーネ・ディートリッヒ主演の西部劇の監督と紹介されていますが、その作品は1952年の「無頼の谷」で、ラング監督とディートリッヒの唯一の組み合わせになっております。 また、チネチッタは、ローマ郊外にあるイタリア初の大規模撮影所になります。

仕事で成功して経済的に上手くいくと、何故か反比例してすれ違っていく夫婦愛。
ベッドの上で愛してると言い合っていた夫婦が、たった半日で愛情が軽蔑に変わっていく様を、延々と痴話喧嘩の中で見せられる映画です。
アメリカ人プロデューサーとその通訳女性の登場で、あっという間にお互い疑心暗鬼に陥り、罵りあい殴り合いを始めてしまいます。もともと映画の仕事に否定的だった妻のカミーユ。ポールが売れない小説を書いていた頃は幸せだったのにと。
ポールが意図的にプロデューサーとカミーユを二人にしたと感じるカミーユ。何とも思っていなかったポールはカミーユがなぜ怒っているかわからず、急に妻が不機嫌になったと感じてしまい苛立ちを隠せません。側から見るとそれくらいのこと?と感じますが、あくまできっかけの一つで、男女がダメになる時は一瞬なのかもしれません。特に女性は一度相手を「軽蔑」してしまうと、元に戻ることは難しいです。また、唐突に訪れるラストも含め、全てを失う時は一瞬なのかもですねー。

この映画の撮影風景をドキュメンタリーとして撮ったのが、ジャック・ロジェ監督の「バルドー/ゴダール」(1963年)になります。

スタッフ・キャスト

ポールの妻カミーユを演じたのは伝説のセックス・シンボル、ブリジット・バルドー。フランス出身のブリジット・バルドーは1952年にウィリー・ロジェ監督の「ビキニの裸女」(←不思議なタイトル)に出演。18歳で監督のロジェ・ヴァディムと結婚。ダーク・ボガード主演で人気を博した「サイモン医師」シリーズの「わたしのお医者さま」(1955年)でイギリス映画デビュー。その後、夫のロジェ・ヴァディム監督の「素直な悪女」(1956年)に主演。奔放な役と彼女のセクシーさが注目され一躍人気女優に。ですが、この映画で共演したジャン=ルイ・トランティニャンと恋愛関係に。ロジェ・ヴァディム監督とは離婚となりますが1958年に再び監督の「月夜に宝石」に出演。この映画ではイタリアの大女優アリダ・ヴァリと共演しています。その後も映画に出演しますが、可愛らしくグラマーでセクシーな役柄が多く、個人的には女優としてあまり代表作や大作がないような印象ですが、1968年に出演したホラーオムニパス映画「世にも怪奇な物語」の中の、ルイ・マル監督、アラン・ドロン共演の「影を殺した男」での、黒髪のブリジット・ヴァルドーは非常に綺麗でした。また、現在ではちょっと過激な動物保護の活動家として有名ですネ。

主人公のポールを演じたのはフランス出身の俳優ミシェル・ピコリ。1954年にジャン・ルノワール監督の「フレンチ・カンカン」にちょい役で出演。1962年にジャン=ピエール・メルヴィル監督のフィルム・ノワール「いぬ」に出演。翌年「軽蔑」と同年に出演したルイス・ブニュエル監督の「小間使の日記」で屋敷の主人を演じています。その後も、ロジェ・ヴァディム監督の「獲物の分け前」(1966年)ではジェーン・フォンダの夫役を演じ、再びルイス・ブニュエル監督の「昼顔」(1967年)やマリオ・バーヴァ監督の「黄金の眼」(1967年)、アルフレッド・ヒッチコック監督の「トパーズ」(1969年)、たびたびのルイス・ブニュエル監督の「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」(1972年)、マルコ・フェレーリ監督の食欲変態映画「最後の晩餐」(1973年)、実際の事件を元にした「地獄の貴婦人」(1974年)、またまたルイス・ブニュエル監督の「自由の幻想」(1974年)、ロミー・シュナイダーと共演した「サン・スーシの女」(1982年)など、2020年にお亡くなりになられるまで、多くのフランス映画にご出演されました。

まとめ

美人の妻は金がかかるで地獄行き

コメント

タイトルとURLをコピーしました