普通に囚われ過ぎると
普通じゃないことも平気でする
ようになるから不思議です。
[原題]Il conformista
[製作年]1970[製作国]イタリア・フランス・西ドイツ
[日本公開]1972
[監督・脚本]ベルナルド・ベルトルッチ
[製作]ジョヴァンニ・ベルトルッチ
[原作]アルベルト・モラヴィア
「孤独な青年」
[撮影監督]ヴィットリオ・ストラーロ
[音楽]ジョルジュ・ドルリュー
[上映時間]112(完全版)
主な登場人物
マルチェロ・クレリチ(ジャン=ルイ・トランティニャン):
34歳の講師。ファシスト政権に傾倒し、かつての恩師である反ファシズム派のクアドリ教授の暗殺指令を受ける。
アンナ(ドミニク・サンダ):
クアドリ教授の若く美しい夫人。かつてマルチェロと会っていたことがある。
その他の登場人物
ジュリア(ステファニア・サンドレッリ):マルチェロの新妻。かわいいがやや思慮浅い印象。
バスクアリーノ・セミラマ(ピエール・クレマンティ):リーノ、運転手
マンガニエーロ(ガストーネ・モスキン):特務情報員。マルチェロの監視兼護衛係
あらすじ
ファシズムに席巻された戦争末期のイタリア。マルチェロは目的も定かでないままファシスト活動の工作員になる。34歳で結婚することにしたマルチェロ、妻に選んだジュリアはお気楽で深く物事を考えないような女だがマルチェロを愛していた。ジュリアの家に怪文書が届き、そこにはマルチェロ父親は精神病院に入院しているが原因は梅毒。結婚はしない方がいいと書かれていた。冷静に対応するマルチェロに頼もしさを感じるジュリアの母。マルチェロは着けられていると感じていていたが、男は特務情報員のマンガニエーロと名乗り、たまたま行き先が一緒だったとマルチェロの自宅に入る。マルチェロは母親の情夫である運転手をマンガニエーロに始末させ、結婚の報告の為、一緒に父親が入院している精神病院に行き、結婚の話をするが話にならない。マルチェロは教会に行き懺悔したいと伝える。マルチェロは13歳の頃リーノと言う運転手と知り合い、その男と仲良くなった。しかし教会で男色の関係に陥った挙句マルチェロは男を銃で撃ち殺してしまう。さらにファシストの一員となったと告げ、困惑する司祭は結婚を勧めその通りジュリアと結婚をしパーティーを行う。マルチェロは反ファシズム派を抑えるため大学時代の恩師であるクアドリ教授に接見しに新婚旅行を装いフランスに向かう。
どんな映画?
イタリアのネオリアリズム作家アルベルト・モラヴィアが1951年に発表した小説「孤独な青年」を元に、ベルナルド・ベルトルッチ監督が映画化。この映画は日本で初めて上映されたベルトルッチ作品として知られ、出演女優のドミニク・サンダが日本で人気になるきっかけとなりました。
1938年のファシスト政権のイタリア
34歳で大学で講師をしている
マルチェロは盲目の友人により
ファシスト政権の活動に加わっていました。
そんなマルチェロは ファシズムに対して激しく傾倒している
訳でもなくなんとなくな感じ
運転手の情夫をもつ母親
精神病院にいる父親
子供の頃人を殺した過去が
マルチェロを無思想な人間にしていました。
ジュリアと結婚したばかりの
マルチェロはかつて大学生時代の
恩師だったクアドリ教授の暗殺を
支持されます。
教授はファシスト政権を批判し
フランスへ亡命していたのです。
マルチェロは新婚旅行を口実に
ジュリアを連れてパリへ向かいます。
クアドリ教授にアポをとり
ジュリアと二人で教授の家を訪ねると出迎えたのはー
娘みたいな若い妻!!
教授の若い妻アンナを見てマルチェロは…
ステファニア・サンドレッリとドミニク・サンダの女性二人が踊るタンゴシーンは有名
タイトルの「Il conformista」を直訳すると体制順応主義者となります。 戦時中など特にそうですが、非現実的な体験が日常で続くとそれが正常になってしまう。ファシズムが「正常」となった社会で、確固たる信念もなく同調していく人々。結構なことをしておいて体制が変わるとコロッと転向。多くの「普通」の人々がそうであるなら、少数派は非常に生きづらい世の中になります。 「普通」や「正常」にこだわるあまり、善悪の判断がつかなく怖さを感じます。
映画の中に登場するひまし油は、下剤として使用されていましたが、イタリアでムッソリーニのファシスト党が、自白を強要するために大量のひまし油を飲ませたことが知られています。
1930年代のファッションや建築、映像美は必見です。
スタッフ・キャスト
原作のアルベルト・モラヴィアは1929年に「無関心な人々」を発表。映画の原作としては、1954年の小説「軽蔑」が1963年にジャン=リュック・ゴダール監督により映画化。同年にはダミアーノ・ダミアーニ監督により1960年に発表した小説「倦怠」が「禁じられた抱擁」として映画化されています。この映画は1998年にフランス人監督セドリック・カーンによって「倦怠」としてリメイクされています。
主演のマルチェロを演じたのはフランスの名優ジャン=ルイ・トランティニャン。現在91歳のトランティニャンは1955年に映画デビュー以来、ロジャ・ヴァデム、クロード・ルルーシュ、クロード・シャブロル、ルネ・クレマン、フランソワ・トリュフォー、ミヒャエル・ハネケなど多くの名監督の作品に出演されています。1956年にロジェ・ヴァディム監督の「素直な悪女」でブリジット・バルドーと共演。翌年再びロジェ・ヴァディム監督の「危険な関係」、ヴァレリオ・ズルリーニ監督の「激しい季節」に出演し次第に知名度を上げ、1966年のクロード・ルルーシュ監督の「男と女」のヒットにより世界的に知られる存在となりました。その後もセルジオ・コルブッチ監督の異色マカロニウエスタンの「殺しが静かにやって来る」(1968年)やカトリーヌ・スパークと共演した艶笑映画「女性上位時代」(1968年)、コスタ=ガヴラス監督の「Z」(1969年)、ルネ・クレマン監督の「狼は天使の匂い」(1972年)、ジャック・ドレー監督の犯罪映画「フリック・ストーリー」(1975年)でアラン・ドロンと共演、フランソワ・トリュフォー監督の「日曜日が待ち遠しい!」(1983年)などに出演。老齢になり主演したミヒャエル・ハネケ監督の「愛、アムール」(2012年)での演技は高く評価されています。
マルチェロのちょっとアホっぽいけどエロい妻を演じたのはイタリア人女優のステファニア・サンドレッリ。ピエトロ・ジェルミ監督の「イタリア式離婚狂想曲」(1961年)や「誘惑されて棄てられて」(1964年)に出演。若い頃はスレンダーな体型と脱ぎっぷりの良い女優さんと言う印象でしたが、1980年代以降に出演した「デシデーリア=欲望」(1980年)や「鍵」(1983年)などで色ボケおばさんを好演(?)。1992年にはペネロペ・クルスの映画デビュー作であるスペイン映画「ハモン・ハモン」に出演しています。
レオタードで登場のアンナを演じたのは1970年代に日本でも人気があったドミニク・サンダ。1971年にイタリアの巨匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督の「悲しみの青春」で、戦禍にさらされる裕福なユダヤ人女性を演じ、1973年はジョン・ヒューストン監督の「マッキントッシュの男」でポール・ニューマンと共演。1977年に出演した「ルー・サロメ/善悪の彼岸」で、花瓶に放尿は度肝を抜かれました。お若い頃は、少年のようなクールな眼差しとスレンダーな裸体が印象の女優さんです。
運転手のリーノを演じたのがフランス人俳優のピエール・クレマンティ。1967年にルイス・ブニュエル監督の「昼顔」に出演。1968年にベルナルド・ベルトルッチ監督の「ベルトルッチの分身」に主演。続いて翌年の1969年にピエロ・パオロ・パゾリーニ監督の「豚小屋」に主演しています。
まとめ
日和見主義で地獄行き
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