邪悪な女友達「灰色の男」

悪女

女の友情は半紙よりも薄い。

[原題]The Man In Grey(灰色の男~変質侯爵物語)
[製作年]1943[製作国]イギリス
[日本公開]1948
[監督・脚本]レスリー・アーリス
[原作]エレノア・スミス
[製作]エドワード・ブラック
[音楽]ルイス・レヴィ
[上映時間]116

主な登場人物

クラリッサ・リッチモンド(フィリス・カルヴァート):
美しく気立良い女学生の憧れの的。後にローハン公爵と結婚。同級生のへスターを親友と思っている。

ローハン侯爵(ジェームズ・メイソン):
灰色の男と揶揄される嫌われ者の侯爵。

その他の登場人物

へスター・ショウ(マーガレット・ロックウッド):クラリッサと友人になる。その後未亡人となりバーバリ夫人となる。
ピーター・ロクビー(スチュワート・グレンジャー):クラリッサと恋仲になる男

あらすじ

とあるオークションで「灰色の男」と呼ばれたローハン侯爵の夫人と幼い息子の肖像画が出品された。その後にその侯爵夫人所有の、ジョージ王朝時代の飾り箱が出品され、由緒ある品だが実質的な価値はなかった。中には、ガラクタとバチェット女史の女学校の冊子があるだけだった。戦時中の為、オークションは中断されてしまった。その飾り箱を狙っていた男は、隣に座っていた女性に明日も来るのかと訪ねた。実は彼女はローハン卿の末裔で、兄の当主はダンケルクで死亡し家系は絶えてしまっていた。一方の男は、かつてローハン侯爵夫人と恋仲になった男の末裔だった。 19世紀バチェット女史の学院に、身寄りを無くしたヘスターがバチェット女史に引き取られ、教師になるべく初級教師のコースに新しく入学して来た。美しいが暗い表情の彼女は、明らかに他の裕福な学生たちとは浮いた存在だった。女学生たちの中でも特別寄宿生のクラリッサは、カーレイ卿の娘で美人で気立ても良く皆の憧れの的だった。美しさでは勝るとも劣らないヘスターだったが、その境遇の違いから、親切に接してくれるクラリッサを妬ましく感じていた。ある日クラリッサとヘスターを残して雪遊びに出かける日があった。クラリッサはヘスターに率直な意見をぶつけ、学校にいる間は友達でいようと約束する。その後学院に占い師が来ていると教えられ二人で占ってもらうことにする。クラリッサが占ってもらうと、いい運勢で何不自由ない豪華な馬車に、灰色服の男。結婚はとの問にもう一人海を渡って来ると言う。そして女友達を作らないことと忠告されてしまう。その次にヘスターが手を見せると占い師は怪訝な顔をしあんたは占えないと断わられてしまう。ある日へスターは頭が痛いと言い心配したクラリッサは彼女を見舞った。するとへスターはクラリッサに、裁縫箱を自分の形見だと思ってと渡す。その後へスターは学院を抜け出し男と駆け落ちしてしまった。学院が彼女に冷淡だったと憤慨したクラリッサは、そのまま自分も学院を辞めてしまった。その後のクラリッサはロンドンで社交界デビューし、上流階級の女性らしく結婚相手を探していた。灰色の服を着た嫌われ者のローハン卿の舞踏会に出席したクラリッサ。ローハン卿に会うもあまり好意を持たれなかったと感じていた。しかし突然ローハン卿がクラリッサを訪ね、彼女に求婚した。

どんな映画?

1941年に出版されたエレノア・スミスの小説「灰色の男」を、イギリスの脚本家兼映画監督のレスリー・アーリスが映画化。出演したマーガレット・ロックウッド、ジェームズ・メイソン、フィリス・カルバート、スチュワート・グレンジャーたちをスターダムにのし上げた映画としても知られています。

1943年のロンドン
ローハン侯爵邸のオークションが開かれ
若い男女が隣合わせます。
彼はローハン侯爵夫人ゆかりの物を
手に入れたいと言っています。
ローハン邸は当主が戦死し断絶しています。
彼女はローハン家の女性で当主の妹でした。
肖像画に描かれたローハン侯爵夫人は
彼女にそっくりでした。

19世紀のイギリス。
寄宿性の女子学院に身寄りのなくなった
へスター入学してきました。
教師になるべく校長のバチェット女史が
引き取ったのでした。
美人ですが暗い表情のへスター。
一方名門の出身で美人、おまけに優しい
女学生クラリッサは学生達の憧れの的

クラリッサはへスターにも忌憚なく接しますが、
僻みの強いへスターは彼女を快く思っていません。
ある日二人っきりになる機会があった時
二人は親友の約束をします。
しかしその後へスターは男と駆け落ちしてしまいます。
へスターへの対応に不満のあった
クラリッサも学校を辞めてしまいます。

その後 
名門でも皆んなから嫌われているローハンと結婚することになります。
灰色の服ばかり着ているので
「灰色の男」
と影で呼ばれていました。
しかしこの結婚は幸せではありませんでした。
そんな中、クラリッサは友人からへスターが
旅芸人の女優とし舞台に出演していることを知ります。

すぐに会いに行ったクラリッサ。
途中追い剥ぎのような男と出会い
無理矢理ぶっちゅー
なんて失礼な男なの!
でもまんざらでもない様子
小さな劇場の桟敷席に座るクラリッサ
舞台にはへスターとさっきの男が?!

へスターを食事に招待すると
泣き出し夫は死んでしまい貧困に喘いでいると言います。
同情したクラリッサは城で息子の
家庭教師やってみるのはどう?と
提案。

だって私たち 友達でしょ?

ってほんとに大丈夫?

クラリッサに代わりローハンの妻の座を約束され思わずガッツポーズのへスター

「灰色の男」はイギリスの女性ジャーナリスト、コラムニスト、小説家のエレノア・スミスによって1941年に出版され大ヒット、翌年にはアメリカでもベストセラーとなりました。 映画化に際して当初、悪友へスターを演じたマーガレット・ロックウッドはクラリッサ役を希望していましたが、説得により悪役に挑戦。この決断が功を奏し、映画は当時のイギリスで大ヒットしました。

副題に何故か「変質侯爵物語」とありますが、ジェームズ・メイソン演じる侯爵は案外影が薄く、サディステイックな部分は、ラストの場面のみです。 クラリッサの目線で語られながら、親切にしてくれる友人に対して、嫉妬心だけで生きている悪女の「未必の故意」を利用した殺人物語になります。 へスターが最初からクラリッサを利用しようとして近づいてはおらず、どちらかと言うとクラリッサがアホみたいに彼女に近付き自業自得なような気もしますし、ラストはツッコミどころがありますが、マーガレット・ロックウッドの悪女ぶりと、フィリス・カルヴァートの天然ぶりが見どころです。

男が絡むとあっと言う間に、裏切られてしまうのが女の友情なのかと思うと、万国あるあるなんでしょうかネ?

スタッフ・キャスト

悪女役のへスターを演じたのはイギリス人女優のマーガレット・ロックウッド。1940年代のイギリスを代表する女優の一人で、その美貌と演技力で人気を博しました。1938年にイギリス時代のアルフレッド・ヒッチコック監督のサスペンス映画「バルカン超特急」のアイリス役で主演。その後にイギリスの巨匠監督キャロル・リードの「ミュンヘンへの夜行列車」(1940年)に主演。意志の強い真っ直ぐな性格の若い女性を演じていましたが、この「灰色の男」(1943年)で演じた悪女役が大当たり。1945年に再びジェームズ・メイソンと共演したレスリー・アーリス監督の「妖婦」では、強盗になる邪悪な貴婦人を演じています。さらに、この出演の間にレスリー・アーリス監督のロマンス映画「愛の物語」(1944年)に出演し、スチュワート・グレンジャー、パトリシア・ロックと共演しています。また、日本では劇場未公開になりますが、オーソン・ウェルズも出演している「トレント最後の事件」(1952年)にも出演しています。

もう一人の女主人公クラリッサを演じたのもイギリス人女優フィリス・カルヴァート。アヒル口にびっくりしたような顔の美人で、1940年代にゲイズバラ・ピクチャーズ(イギリスの映画スタジオ)で製作されたメロドラマに欠かせない女優の一人となりました。この「灰色の男」(1943年)に出演しイギリスでスターになります。1944年に再びスチュアワーと・グレンジャー、ジェームズ・メイソンと「激情」に出演。ハリウッドでは1951年にアラン・ラッドと共演した西部劇「対決」に出演しています。また、だいぶオバはんになってからイギリス産サイコカルト映画「ツイステッド・ナーブ 密室の恐怖実験」(1968年)に出演されています。

この映画でイギリスを代表するスターの一人となったイギリス人俳優スチュワート・グレンジャー。スマートな美男俳優として「灰色の男」(1943年)、「激情」(1944年)、「愛の物語」(1944年)に出演。1945年にシドニー・ギリアット監督の「ウォルター街」に出演し名優ジョン・ミルズと共演しています。その後ハリウッド映画に出演し、1950年にはデボラ・カーと共演した「キング・ソロモン」に出演。また、「ゼンダ城の虜」(1952年)や、「情炎の女サロメ」(1953年)、「悲恋の王女エリザベス」(1953年)などコスチューム・プレイものも多く出演されています。長らくハリウッドで活躍されました。共演者キラーで多くの美人女優と浮名を流し、ジーン・シモンズの元夫だったことも有名です。

まとめ

女の友情は男で終わるで地獄行き

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