ズロースってお分かりになりますか?
[原題]The Blue Angel(青い天使)
[製作年]1930[製作国]ドイツ
[日本公開]1931
[監督]ジョセフ・フォン・スタンバーグ
[原作]ハインリヒ・マン
「ウィンラート教授」
[脚本]ロベルト・リーブマン
[音楽]フレデリック・ホランダー
[上映時間]107
主な登場人物
ローラ・ローラ(マレーネ・ディートリッヒ):
ナイトクラブ「嘆きの天使」のスター歌手。
イマヌエル・ラート教授(エミール・ヤニングス):
ギムナジウムの英語教授。堅物で厳格。
その他の登場人物
キーベルト(クルト・ゲロン):座長兼手品師
グステ(ローザ・ヴァレッティ):キーベルトの妻
マゼッパ(ハンス・アルバース):ローラに言い寄る男
あらすじ
英語の教授ラートは堅物で独身、学生たちにも小馬鹿にされ威圧的で面白味のない人物だった。その頃学生たちはナイトクラブ「嘆きの天使」に出演しているローラ・ローラのブロマイドに夢中だった。授業中にも回しているブロマイドを取り上げたラート教授。いじめられっ子の学生が同級生に転ばされた際にも教科書の中から彼女のブロマイドが出てくる。彼を呼び出したラート教授はこんなもの不謹慎だと叱責する。そこでブロマイドの女がナイトクラブ「嘆きの天使」に出演しているローラだと知らされる。ラート教授は改めて三枚の彼女の写真を見つめた。ナイトクラブ「嘆きの天使」でのローラ・ローラのショーはガーターベルトを身につけたキャバレーショーで男たちを夢中にさせていた。学生たちを諌めようと「嘆きの天使」を訪れたラート教授は、逃げた学生を追いかけ楽屋の中に入り込んでしまう。楽屋に戻っていたローラは、教授を警察だと思うが、ラートは自分は地元の学校の教授だと答える。部屋の中に学生が隠れていると分かったローラは教授の前でわざと着替え始め教授を困惑させる。上の階からズロースを脱いで教授の頭の上に落とす。落ちたズロースを学生が拾い、こっそり教授のコートのポケットに入れる。帰ろうとした教授の前に座長のキーベルトが現れ芸術と学問の融合だと喜ぶ。逃げた学生を追いかけた教授だがまんまと逃げられ、その夜いじめられっ子はベッドで襲撃されてしまう。ラート教授は部屋に戻り汗を拭くとそれがローラのズロースだと気づく。ラート教授はそのズロースを返しにローラの元を再び訪れるのだが…
どんな映画?
この映画はドイツで製作され、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督が初めてドイツ人女優マレーネ・ディートリッヒを起用し、彼女を世界的に有名にした作品です。また、主演のラート教授に黎明期のドイツ映画界を代表する俳優エミール・ヤニングスを配し、ドイツで最初のフルトーキー映画となります。
ギムナジウムの教授ラートは 偏屈で真面目一本気
生徒からは小馬鹿にされています。
そんなラート教授でしたが
ある日授業中に生徒たちが回している
写真を取り上げます。
そこに写っている女性は
ナイトクラブ「嘆きの天使」の 看板歌手
ローラ・ローラでした。
この写真チュチュ部分が捲れるようになっており
思わず吹いてしまう教授。
これはけしからん!!
と、「嘆きの天使」に乗り込む教授。
教授を見つけ逃げ出す生徒たちを 追いかける教授。
ローラの楽屋に迷い込んでしまった
教授は 若く美しく
おまけにエロい衣装の
ローラに釘付け。
目の前で着替え始めるローラに
ズロースを投げられー
ズロースとは女性用の下着で
かぼちゃパンツですねー
落ちたズロースを隠れていた生徒が拾い
すかさず教授のポッケの中に突っ込む。
そうと知らずに家に戻った教授は
汗を拭こうとハンカチを取り出しー
ん? こ、これは?!
これが世界で初めての
「ハンカチだと思って汗を拭いたら パンツだった?!!」
シーンじゃないでしょうか!?
未検証ですが…
次第にローラの魅力にハマってしまう教授でしたが…
有名なキャバレーポーズ
小説「魔の山」や「ヴェニスに死す」の原作者として知られている作家トーマス・マンの兄で、同じく作家であったハインリヒ・マンによる1905年の長編小説「ウィンラート教授」を元に映画化。
大胆に足を出し、コルセットにガーターベルトと下着姿で登場し歌うローラを演じたのは当時29歳のマレーネ・ディートリッヒ。この頃やや太めに感じますが、若さが溢れています。 マレーネの歌う主題歌は「Falling In Love Again」
このローラを見て夢中になってしまったラート教授。今まで真面目に生きてきた男が階級違いの女性にハマり転落していくという典型的なパターンですが、もうやめてくれーと言わんばかりに次々と蔑められていく様は圧巻です。
この映画は1958年にエドワード・ドミトリク監督がリメイクされております。
スタッフ・キャスト
監督はジョセフ・フォン・スタンバーグ。パラマウント映画でハリウッドデビューし、1927年に史上初のギャング映画と言われている「暗黒街」を監督。興行的に成功し一躍知られるようになります。その後1930年にドイツで初のトーキー映画と言われる「嘆きの天使」でドイツ人女優マレーネ・ディートリッヒを起用し世界的名声を得ました。「嘆きの天使」と同時に無名に近かったゲーリー・クーパーを相手役のメロドラマ「モロッコ」(1930年)を監督。これによりジョセフ・フォン・スタンバーグとマレーネ・ディートリッヒの黄金コンビで、「間諜X27」(1931年)、「上海特急」(1932年)、「 ブロンド・ヴィナス」(1932年)、「恋のベージェント」(1934年)と次々と発表。ですが「西班牙協奏曲」(1935年)を最後に公私共に続いたコンビを解消。1935年にドフトエフスキーの小説「罪と罰」をピーター・ローレを起用し監督しています。ですがその後思うような作品を残すことができず名声は失墜してしまったそう。ですが1941年に知る人ぞ知るフィルムノワール の佳作「上海ジェスチャー」を監督されています。また、1952年にはロバート・ミッチャムとジェーン・ラッセルを起用したノワール映画「マカオ」を監督。また、第二次世界大戦中にアナタハン島で複数の日本兵と民間人の女性1人が取り残された事によって発生した事件を題材に「アナタハン」(1953年)を監督されています。
ラート教授を演じたのはドイツを代表する俳優となっていたエミール・ヤニングス。1924年に出演したE・A・デュポン監督のサイレント映画「ヴァリエテ」に出演。その翌年にはF・W・ムルナウ監督の「最後の人」(1925年)に出演し世界的な名声を獲得。これらの映画はドイツ表現主義の傑作と位置付けられています。その後ハリウッドに渡りヴィクター・フレミング監督による「肉体の道」(1927年)やジョセフ・フォン・スタンバーグ監督による「最後の命令」(1928年)に出演。この二本のサイレント映画の演技により第1回アカデミー賞主演男優賞を受賞しています。ですがトーキー時代に突入し言葉の壁にぶつかりドイツへ帰国。そして再びジョセフ・フォン・スタンバーグ監督の「嘆きの天使」により自身最大のヒットとなりました。
ちらっと登場しローラにキスをするマゼッパを演じたのが20世紀のドイツで最も人気のあった俳優の一人と言われたハンス・アルバース。戦中の1943年に巨額の予算で製作された「ほら男爵の冒険」で主演のミュンヒハウゼン男爵を演じたことでも知られています。
まとめ
美女で転落地獄行き
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