限りなくちっこ目なので、眼力は全くありません。
[原題]Of Human Bondage
[製作年]1934[製作国]アメリカ
[日本公開]1935
[監督]ジョン・クロムウェル
[原作]サマーセット・モーム
[音楽]マックス・スタイナー
[上映時間]83
主な登場人物
ミルドレッド・ロジャーズ(べティ・デイヴィス):
ツンデレウェイトレス。
フィリップ・ケリー(レスリー・ハワード):
足の悪い医学生。元は芸術家を目指していたが挫折して医学の道に。店で知り合ったウェイトレスのミルドレッドに一目惚れしてしまう。
その他の登場人物
サリー(フランシス・ディー):アセルニーの娘
エミール・ミラー(アラン・ヘイル):ミルドレッドに入れ込んでる中年
ジョン・キャラダイン(ジョン・ピーター・リッチモンド名義)
グリフィス(レジナルド・デニー):ケリーの友人
あらすじ
パリで絵の勉強をしていたケリーだったが才能がないと言われあきらめることにした。彼には先天的に内反足(足が内側に変形している)の障害があり、今度は医学の道を目指し、ロンドンの聖バーソロミュー病院に学び始めた。ある日ケリーは友人に誘われレストランに行く。そこには友人のお目当てのウェイトレスが働いていた。そっけない態度を取る彼女に友人は愛想をつかしたが、ケリーは彼女に好意をもつ。レストランに通い彼女を誘うことに、駅の二等列車の待合室で待ち合わせをした。彼女ミルドレッドにシャンパンを飲ませ、彼女のコケティッシュな魅力にはまってしまう。寝ても覚めても彼女の顔が浮かび勉強にも集中できなくなっていた。ミルドレッドにはほかに中年のパトロン、ミラーがいた。気のないふりをするかと思えば誘惑するような態度をとるミルドレッドにすっかり夢中になってしまったケリーは彼女に指輪を買いプロポーズすることに。しかし当日彼女はほかの男と結婚するというのだ。
どんな映画?
絵の勉強をあっさりあきらめてしまうケリー。ロンドンに戻り次に目指したのは医学の道です。
彼には足が不自由と言うコンプレックスがあったからです。
ある時友人に頼まれ、ウェイトレスとの仲を取り持つことに。
ウェイトレスのミルドレッドは注文を聞きにきても目も合わせないあり得ない態度。
かわいいと思っていたけどなんか傲慢な態度に嫌気がさした友人はとっとと帰ります。
正しい判断でした。
ところが今度彼女にハマってしまったのはケリーの方でした。
いやにくねくねしているミルドレッド、上目遣いのしゃべりかた、コケティッシュな魅力があります。
若い頃のベティ・デイヴィスの魅力といえば何と言っても、その目ん玉がこぼれ落ちそうなくらい大きな瞳ですね!
何をやっていてもミルドレッドのことが頭から離れないフィリップ。
人体模型も彼女に見えてしまう始末。
勉強に身が入らず落第。
このままじゃいかんと思い、プロポーズを決意したケリー。
ミルドレッドは…
あっさり振ります。
かねてから迫られていた中年男ミラーと結婚すると言うのです。
私のことは忘れて。
んな あほな…
打ちひしがれたケリーでしたが、時間が傷を癒してくれ、そして新しい彼女もできました。
しかし再び現れるのです。
あの女が―
ミラーに捨てられたミルドレッドの哀れな姿でした。
泣きつくミルドレッドを振り切れないケリー。
そしてまた裏切りにあうのでした。
悲惨な末路をたどるミルドレッド。
原作はサマセット・モームの自伝的小説「人間の絆」です。同じくモームの原作で1932年の映画化「雨」では、ベティ・デイヴィスとは因縁の相手ジョーン・クロフォードが悪女サディを演じています。監督のジョン・クロムウェルは後に「王様と私」でリメイクされた1946年「アンナとシャム王」などの作品があり、こちらの「痴人の愛」で女流作家ノラを演じたケイ・ジョンソンとの間に、1995年の牧羊豚映画「ベイブ」で牧場主を演じたジェームズ・クロムウェルがいます。
スタッフ・キャスト
ミルドレッドを演じたベティ・デイヴィスはアメリカを代表する大女優の一人。この1934年の「痴人の愛」で見事なまでの悪女を演じ、演技派女優としての転機となりました。
この「人間の絆」に登場するミルドレッドの救いようのない悪女っぷりに、主演の女優選びに難航したそうです。そこに名乗りを上げたのが当時ワーナーに所属していたベティ・デイヴィスでした。この頃の女優は映画会社に縛られており、他社の映画に出ることは許されていませんでした。しかしデイヴィスはこの役を手にし、RKO(地球の上に電波塔がピーピー言うやつです)製作の「痴人の愛」は大評判呼び、彼女の演技は絶賛されました。しかし他社で評判をとったことに難色を示したワーナー上層部によりデイヴィスはアカデミー賞にノミネートすらされませんでした。これに対して抗議した世論や批評家により事態が混乱し、ノミネートに関らずデイヴィスに投票してもよいという異例の事態に陥りました。しかしデイヴィスの受賞はならず、この年はちょうど名作スクリューボールコメディの「或る夜の出来事」と重なってしまったんですね~。翌年ベティ・デイヴィスは「青春の抗議」でアカデミー賞主演女優を受賞しましたが、全く不本意な結果だったようです。
主人公フィリップを演じたレスリー・ハワードはいかにも善良そうなイギリス紳士風の風貌で、1936年「化石の森」でもベティ・デイヴィスと再び共演しています。レスリー・ハワードで最も有名なのは1939年の大作「風と共に去りぬ」のアシュレイ役ではないでしょうか?正直昔はこんなつまんなそうな人のどこにスカーレットが魅かれるのかわかりませんでしたが、結婚するならこーゆー誠実そうな人がいいんでしょうね。一時期マール・オベロンと不倫関係に陥ったものの結婚は一度だけだった模様。慰問に回っていた第二次世界大戦中に旅客機が追撃され非業の死を遂げました。
若き日のベティ・デイヴィスの悪女っぷりが見ものです。
まとめ
悪女に出会って地獄行き
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